オススメできる人
- SFアドベンチャーが好きな方
- タイムパラドックスをよく知っている方
- 過去をやり直したいとよく思う方
時間移動
間違いなく人類の憧れの一つであり、科学が目指すべき一つの方向でもあります。とはいえ理論上、無理だと言われていたり、あるいは光の速度より早く動ければできるけどどちらにせよ結局人類の力じゃ無理だから時間移動も無理と言われているみたいです。
科学議論はともかくとして、過去に思いを馳せるのも未来への好奇心を抱くのも人が当たり前に持つ感情であり、2つを同時に叶えてくれるであろう時間移動の方法、例えばタイムマシンのような作品は世界中で存在します。時間という概念でいうなら最近紹介した下の記事も近いかもしれませんね。
しかし、大抵の作品で時間移動の危険さに対する警鐘も表現しています。最終的に時間移動の目的が達せられるか達せられないかに限らずそもそも理論的にだけではなく道義的に正しいことなのか、と議論もまた数多く存在します。
例の超有名青い猫型ロボット漫画でも、何かと時間移動に関して議論されますね。
だから君じゃないです。
それはさておき、今回の作品ですが。
おそらく、数多くある話の中でも時間移動を最も俗物的かつ、スケールが小さいことに活用することで、有意義に、かつコントロールできる範囲で時間移動を行っています。
しかし、どれだけ安全管理を徹底していても危険なものは一歩間違えれば大惨事につながるのはよくある話。遊園地のジェットコースター、サファリパーク、サバイバルゲームなど、スリルを味わう娯楽は常に大きな問題を抱えています。厄介なのは危険さに無知な人が大概問題を引き起こし、裏に秘めた「欲望」がより事態を深刻化することが多いことです。
SFでもありながら、今の様々な問題に対してつながる話かもしれません。
時間移動に関してネガティブ……というよりは、どこまで行っても時代が進化しても人は愚かなことをしてしまうことという形でネガティブなのかもしれません。
あらすじ
2055年、技術の進化により、人は時間移動を可能にする装置、TAMIを開発します。しかし、肝心の使い所は、恐竜をハントするという「ハンティングツアーサービス」という金持ちの道楽でしか使われませんでした。
時間のルールを守りつつ、スリルを味わいながら死ぬ運命にある恐竜をちょっとだけ早くハントするという斬新な経験は多くの人物をしました。
トラヴィス・ライヤーは、TAMIの使い方に納得はしていないものの、自身の夢である、絶滅生物を復元させるための研究をす進めるため、ツアーの責任者兼、研究者として働いていました。
もともと、TAMIそのものはソニア・ランドという女博士が開発したものだったのですが、チャールズが過去に、彼女を言葉巧みに騙して権利を奪い、「ハンティングツアーサービス」を始めたのです。トラヴィスは金儲けしか考えないチャールズに危機感を覚え、そしてツアーを邪魔するほど抗議をするソニアの言葉を効いて、自身の夢と底知れぬ不安の間に悩んでいました。
悩みながらもツアーを続ける彼にとある一組の客が訪れます。
多少問題はあったものの、無事、ツアーは終わってたはずでした。
最初の変化はゆっくりと。
しかし恐ろしいほどの加速度で進んでいきました。
少しずつ変わっていく世界、ちょっとずつ壊れていく何か、そして全てを飲み込む衝撃……。
ソニア博士の言葉をトラヴィスは、いえ、世界は身を持って思い知ることになるのです。
どうしてこんなことになったのでしょう。
彼らは原因を突き止め、元通りにするために動き始めます。
スケールが小さい時間移動の使い方
たいていこういう場合、「大切な誰かを取り戻したい」とか「過去の偉人の行動を知りたい」といったことが時間移動の開発の候補に上がると思うのですが、冒頭に上げたとおりお金持ち相手のレジャーのために使われています。
「人類の憧れをこんなことに使うとは……」
という気持ちが働く時間移動のやり方に困惑する人たちは少なくないと思います。
確かに、新技術を広く普及させるためには、お金持ちに興味を持ってもらい、レジャーにして効率よくお金を出してもらうというのも戦略的にはあると思うのですが、完全にお金稼ぎが目的となっているチャールズ社長と、時間移動とは直接関係がない目的があるトラヴィス博士にそこまで戦略的な考えがあったかは微妙なところです。
そして、厄介なのはどれだけスケールが小さかろうと時間移動、そして時間の影響の力が弱くなるわけではありません。(もし、時間の影響力がわからないという方がいらっしゃいましたらぜひ複利という言葉を調べてみてください。お金という最も身近なものと時間が絡むとそれはそれは恐ろしいことになります)
言ってみれば、ぱっと見、リスクが小さくリターンが大きいものでしたが、実際はとてつもないリスクがあったことに気がついていなかったという言葉で片付きます。
そして、恐竜が過ごす時代、白亜紀というはるかな昔から続く時代の流れは些細な気持ちで踏み込んだ愚か者を笑い、押しつぶすかのように動いてくるのです。
無知と欲望の恐ろしさ
問題に気づき、解決しようとするも、原因がわからず、そしてその間も歴史の波は恐ろしいほどの力を世界に伝えていきます。罪があろうがなかろうが、家族がいようがいまいが、ちょっとずつ変わっていくのです。
原因については当然ネタバレなので言えないですが、一つ言えるのならば、原因はテーマにもした「無知」と「欲望」から始まりました。どれだけ事情がわかっている人がそばにいようとも、どれだけ色々なものを禁止しようとも「絶対」はなく、しかし人類全体視点で「絶対」でなければいけないという矛盾めいて不可能な存在があります。
全ての人が全てを知るなんてことはできませんし、全ての人が全てに対して我慢するということも同じように無理です。誰かが「無知」であり誰かが「欲望」を抱く限り、一歩間違えれば大惨事になるものは結局人が扱ってはいけないものなのかもしれません。
これはフィクション世界でありますが、時間移動という現在から計算すると30年では確実に達成できない可能性が高いものでなくても、現在の兵器や技術でも言えることです。
もっと言うのならば、深く知ろうともしない、そしてなんとなくなやりたくてやっていることが、大きな災害の種になっているかもしれません。だからといっても何もしないことで何かが解決するわけもありませんが……。
総評
時間移動というメジャーな題材と小さく扱っている危険な技術から大きな災害につながる、というメッセージが伝わった作品です。
過去の作品でもある時間のルールなどをキッチリおさえつつ、ちょっと変わった作品を見た気分でした。
時間トラベル物としてはそこまでコアな知識は必要ないですが、ハラハラするアクションシーンとしての要素はやや控えめで、どちらかというとじわじわと広がるホラー感覚のほうが強めでした。
技術、そして当ブログのテーマで上げた「無知」と「欲望」そして時間について複雑に絡まっているので、様々なことを考えるのにいい映画です。
とはいえ、この手の作品にありがちですが、設定が重い割に展開が早いので、見ることに集中して終わったあとでどんな映画だったか考えるほうが楽しめると思います。
しかし、本当に時間というのは恐ろしいものです。過去も現在も未来も。
要点へのヒント
実はとある言葉がそのままこの映画のヒントとなります。そしてテーマにも繋がっていくのですが、是非見る前に考えてみてください。ヒントは……風ですね。
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