※やや過激な性描写がある映画です。苦手な方は別の記事をご覧になってください。
- 障害者の話を見たい方
- 厳しくも温かいお話が見たい方
- ネガティブの極地にポジティブを見たい方
いろいろな事情があって、世間の概念からはぐれてしまう人たちがいます。
綺麗事を抜きで言うならやはり世間の目は冷たく、生きていくのには困難です。私も障害者で一般的な世界から少し外れていますが、日常生活をある程度は普通に生活できる分、まだマシな方だと自分でも思ってますし、周囲からの認識もそうなのでしょう。
それでも普通の人間が当然できることができないというのは耐え難い苦痛です。特にどれだけ努力してもできないことが周囲には平然とでき、貶され、差別され、そして色々と失っていくのです。
周囲の支えによっては失う前に護られることができたりより大きなものを得ることができる場合もありますが、そうでないことも、いえ、そうでないことのほうが多いでしょう。
よくテレビなどで明るく前向きな障害者の方が紹介されたりしますが障害者でもポジティブに生きられるからといって障害者全てがポジティブでなければいけない理由なんてありませんし、そもそもできません。もっと言うのならばそんな力は国だろうが世界だろうがありません。
今回は、その中で出会った3人(時々もう一人?)のお話です
。
あらすじ
厳かなで冷たい雰囲気の中、物語はとある男の死刑から始まります。刑は間違いなく、執行されたはずでした。しかし、どういうわけか、男は息を吹き返してしまいます。
どうすればよいかと悩む執行人達は悩みます。
もう1度死刑を執行することは、自分たちの非が明るみになる上に、国民も納得しません。
裏の事情、そして刑によって下半身付随となったことで彼はとある病院に移されることになりました。
その病院は様々な事情を抱え、様々な個性を持った人たちの集まった場所です。
それから時は流れました。
幻聴が聞こえる難病を抱え、しかし、どこか行動力や優しさがある一人の青年、そして母親に連れられて来た一人の少女、そして、陶器作りがライフワークとなった車椅子の死刑囚が中心となって物語は進んでいきます。
しかし、この物語は決してただただ、立ち直っていく優しい物語ではありません。
わずかな明かりに照らされながら夜を手探りで進んでいくような話です。
障害者たちの苦痛
メインテーマとはまた違いますが、大きな側面を持っているのが障害者です。一般人から見て辟易とするような(実際そういうシーンがあります)変わったというにはあまりに奇特な人達の生活や、会話、そして陰に潜む暗い闇などが描かれています。
家にいられない人、生活がそもそもおぼつかない人、コミュニュケーションがうまく取れない人、思わず眉をひそめてしまうような行動を取る人など様々です。
そして、その苦しみから暴れたり、パニックを起こしたり憎まれ口を聞いたり、あるいは何もできなくなったりととても見てるだけでも痛ましい生活を送っています。
世間の人々がただの狂人として距離を置くことも無理のない一方、どうにか彼らが幸せな生活を送ることができないか(もちろんそのために犠牲になる人がいないという前提のもとで)ということを考えさせられます。
家族の問題
そして、先程紹介した、死刑囚の男性と青年、少女ですが、実は共通して家族に関する問題があります。こちらがメインテーマと言えるでしょう。もはやそれは呪いと言ってもさしつかえないほど、深く、重く、苦しい問題です。(カメラの青年の事情に関しては作中では特に語られません)
家族の絆や愛情は絶対などという方もいらっしゃいますが、そうであるならばいじめ、虐待などの問題などは起きません。ましてや障害を持った家族で円満で過ごせる可能性は決して高くはないです。
彼らもまた、悩み、苦しみ、抗おうにもどう抗えば良いのかすらわからない、そもそも抗いようがないほどの苦痛を抱えながらも日々を生きていました。
しかし、傷を持つもの同士ほど理解し合える関係もあります。色々と問題があったり、人に悪く言われたり、すれ違いがあったりしながらも、4人は友達と言うには年代がそれぞれバラバラで、家族と言うには過ごした期間は短く、しかし、ただの知り合いというにはあまりにも親しくなっていきます。
彼らの根本に優しさがあるからこそ、この繋がりができたのでしょう。
苦痛はどこまでも何度でも襲いかかる。
しかし、とあるそんな日々を壊すような事件が起こります。
そして、3人はそれぞれの問題に向き合っていくことになるのです。
障害者だからという理由ではなく、仮にその場所にいたのが普通の人だったとしてもあまりに重く、苦しくて、いたたまれない出来事でした。
キャッチコピーにもある「その優しさを、あなたは咎めますか?」という言葉に私ははっきり「できません」と答えます。
小さな問題とは言いません。
もっと他に方法があったはずということも否定しません。
誰かに頼れば良かったという可能性もあったでしょう。
しかし、どうしても責めることはできません。
少なくとも、作中、その「優しさ」を責めるような描写はほとんどなく、そして視聴者もほとんどの人が称賛はできないにしても、いたたまれない気持ちになるでしょう。
あまりにネガティブで、そして膨大な優しさは、その後、彼らの中で大きな力を育てていくのです。
総評
色々展開が早かったり、賛否両論が激しくなるような場面も多かったですが、ネガティブさの中に強い優しさと温かみのある映画でした。
この映画を見ていると、家族関係、健康、社会の問題などに絶対というものがないということを知る一つの手助けになるでしょう。
もちろん障害者を全て理解した気になるのは私を含め傲慢ですし、障害者の問題を障害者の視点だけで見るのも良くはありません。しかし、彼らの生き方、優しさ、そして、勇気は苦しむ人たちへの大きな支えになるでしょう。
やり方が間違っていたというのならば、あなたがどうすれば救えたかを考えてみてください。
それもまた大きな一歩になるのです。
いずれにしても、作中に溢れるネガティブを通して、人に共感しやすくなり、優しさの一つの形を知ることができる映画と言えるでしょう。
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