一言
昆虫食、馴染みがないからこそ、宝があるかもしれません。
本について
日本をはじめとして様々な国の一般的な昆虫食をめぐり、そして味の感想や背景の文化などを記載したドキュメンタリー本です。
言うまでもなく、日本では昆虫食はあまり好かれていないどころか、嫌われていますね。怖い、汚い、気持ち悪いとの負の3Kが揃っています。
罰ゲームに使われているぐらいに、相当ネガティブな印象があるといえるでしょう。
しかし、ちょっと興味があるという人もいるのではないでしょうか?怖いもの見たさの興味だったり、将来の食糧事情の不安の解決策候補だったり、あるいは未知なる異文化に対する好奇心だったり、虫を踊り食いする人々のたくましさだったり、理由は様々ですが、一部の地域を覗いて日本に馴染みがない以上、昆虫食には日本の知らない新しい世界の宝庫と言っても過言ではないでしょう。
まさにそんな世界の数々を見せてくれるのがこの本というわけです。
もちろん、すべてを受け入れる必要はないですが、知ったうえで、「自分だったらどの国のどの虫まで行けるか」「あるいはどのような調理方法だったら食べられるか」なんてことを考えると非常に楽しめます。
少なくとも話を聞くぐらいだったら大丈夫という人だったら、是非当書籍をおすすめいたします。そうしないと、この本の著者みたいにすさまじいハードルの昆虫食を味わうことになってしまうかもしれません。
ちなみにこの記事内では、虫の画像の使用は控えます。ご安心あれ。
おすすめポイント!!
バッタVS人類?
本の中で様々な世界をめぐり、一般的に食べられている昆虫食を巡っていますが、かなりの頻度でバッタやイナゴが出てきます。
バッタが人気があるからというよりはだいたいこんな感じです。
「俺らの農作物を食いやがって!!このままじゃ飢えてしまう!!」
「こうなったらお前らを食ってやる!!」
(※セリフはブログ著者による勝手イメージです)
いわゆる蝗害という言葉があり、三国志などでもおなじみですが、バッタやイナゴというのは大量にやってきて農作物を食い荒らしてしまい、そうなると必然的に人々は食べるものに困ってしまうことになります(今は一部の地域ぐらいしかないようですが)
そして食べるものがなくなったらあるもの、すなわち、人々がバッタを食べるという循環が起きやすいとか。バッタは天災の象徴と言われると同時に「人類が天敵である」といっても良いと言うぐらいかなりの世界各国で食べられているみたいです(もちろんバッタがいるからといって食べない国もありますが……)
どれぐらい好みが分かれるかはやはり国によっても分かれるみたいであくまで苦渋の決断という国もあれば、すっかりバッタを食べることにはまってしまった国もあるみたいですね。
中でも面白いエピソードが一つあったので紹介します。(ちょっとだけ文体変えますが)
政府の人々がバッタが農作物を食い荒らし、経済に影響が出るという理由で殺虫剤をまこうと現地民に
「あのー農作物を食い荒らすバッタがいるので処分したいのですけど……」
と相談したところ、
「なにぃ!!俺らの貴重な食料であるバッタを殺すってか!!」
「やめろやめろ!!出ていけ!!」
(※繰り返しますがセリフは著者の勝手なイメージです)
と現地の人々の反対にあい、結局農作物が取れずに経済に打撃があったそうです。とんだ逆転現象ですね。
次の章でも詳しく話しますが、昆虫食は安いイメージがあるかもしれませんが、場所によっては牛肉や魚よりも高い値段がつくことがあり、このような(見ている分には)面白い逆転現象が起きてしまうわけですね。
バッタの各国の反応を見ていてもなかなか面白かったです。
ちなみにブログ著者はバッタなら多分いけます。
牛肉より高い虫!?生でそのまま!?通貨と同じ!?驚くべく多様性
虫を食べるといってもなかなか食べ方は多様です。
格式高いレストランで高級食材として出てきたり、あるいは、木を切り倒したら出てきたものを「ラッキー♪」といってそのまま生で食べたり……。
海で採れたての牡蠣をそのまま食べるみたいな感覚なのでしょうか?非常にたくましさを感じます
(ただし医学的に見ると、けっこう危ないことも多いのだとか。そういう部分も牡蠣に似ているかもしれません)
ただし、高級だからといって、万人向けと言われたらそうでもなく、中国地方で出てきた昆虫料理は記者や同行者はほとんど受け付けず、中には「二度と食べたくない」「味がほとんどしない」というものもあり、文化性の違いを感じさせるものもありました。
また、「おいしいから」という理由だけではなく、薬や健康食としての側面もあり、中でもアリを食べ続け、90代で大工稼業を現役で営んでいるという老人がいました。
「アリを食べればアリのちからが手に入ると思った」とのことですが……医学的根拠はなにもないにしてもたいしたものです。
アフリカのとある民族は、とある蛆虫を自分たちで食べながらも貨幣の代わりとして様々な生活用品と取り替えるという驚くべく活用方法もありました。
ちなみに現地の方々はこの虫が相当な好物らしく、「もし一生で一つの食べ物しか食べられないならこれだけ食べる」というほどだとか(この質問日本以外でもするんですね)
自分たちでも食べ、通貨としても扱い、そして宗教にも深く関わる……なんというか、ここまでくるとただの「食べ物」「金銭」としての側面を大きく変えた姿を見せられた気持ちになりましたね。
こうして読んでいくと、挿絵に出てくる白い体ウネウネしていそうな蛆虫が美味しそうに見えたり……。ごめんなさい。ブログ著者は焼こうが煮ようがすり潰そうが、イモムシや蛆虫は無理です。
これからの昆虫食
最後の方にこれから昆虫食はどうなっていくのか、という話がまとめられております。
いわゆる遺伝子組み換えなどの最新技術や養殖、牛や豚などの餌などの副次効果なども研究されているそうです。
国連でも昆虫食は栄養や、取りやすさの関連から推奨されており、様々な国でも研究が進められているとか。
産業廃棄物や人のアレコレを餌とした昆虫食に期待したいと書いてありましたが……正直、産業廃棄物を餌にした昆虫を食べたい人が少なくとも日本にいるかどうかは流石に疑問です。
日本では少なくとも、かなり安全に育てられた虫たちを身近な食べ物に近い味に再現する、というやり方が取られており、当分はこの方針で問題が進んでいきそうです。(作中にも出てきますが、エビに近い味覚を出すのが多いみたいです)
ちなみに、昆虫食に嫌悪感を持つのは日本だけではないそうですが、そういった国では、子供のうちから昆虫食になれさせようという取り組みもあるみたいです。
定期的なイベントや試食会などを行い、原型がないほど調理された虫や、あるいはそのまま食べても安全な虫を子供に食べさせ、抵抗感をなくしていくようですが、いい成果が出ているみたいです。
いつかは日本でも始まるかもしれませんね。
……我々は大人組は今のうちに昆虫食になれておくべきか、それとも、平気な子供に虫を食べさせて、従来の食べ物だけ食べて死んでいくかなんとも読めない問題です。
ただ、そうなると、子供に好き嫌いやめろと言えなくなるのは大きな問題かもしれません。楽しみでもあり、不安もあり、なかなか興味深いお話でした。
ちなみに結論から言うと、ブログ著者は虫の姿をしてない昆虫食をどこまでも所望したいと思います。(ただしイモムシとGは無理)
注意点
最初のページの方はそんなに閲覧注意的な写真はないのですが、中国の虫文化の紹介あたりから……まあ昆虫食のぞっとする写真が出てくる出てくる。
「虫は無理!!もう絶対無理!!」という方には流石におすすめできないです。
(具体的にいうと普通の料理の中に虫がゴロゴロ入っていたり、蛆虫の写真がそこそこ出てきたり)
最後に
ネガティブな印象の昆虫食ですが、それだけになかなか興味深い世界が多く見れました。
この本を読んでも「よし!さっそく昆虫食を食べるぞ!!」とはなりませんが、抵抗なく虫を食べる人々を見て、僅かな嫌悪感とともに羨望を覚えることもありましたね。
それはたくましさだったり、生活の知恵だったり、あるいはもっと深い文化のつながりの象徴だったり……昆虫食でなければ体験できないということはないかもしれませんが、もしかしたら昆虫の栄養以上に様々なメリットがあるかもしれませんね。
いつか、彼らとともに虫を食べる日が来るのか、それともその部分以外で文化の共存を図るか……SDGsなどの問題を考えるとどちらにせよ決めなければいけないのかもしれません。
そのための判断の一つの基準としてもいいですし、単純に未知の世界を見たいというのならばおすすめです。
あるいはダイエットをしたい方にどうぞ。食欲は少なくとも減衰しました。
……この感想が出る時点でまだまだ昆虫食のことを考えるには精進が足りないみたいです。
(良いか悪いか別にして)
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