一言で
少しだけ冷静に正義を考えられる本です。
本について
著者がニュースやSNSの呟き、はたまた著名人との会話で思った出来事について2〜3ページ程度に書いたエッセイです。
タイトル通り、ニュースやSNS等で「これは悪だ!!」「これはよくないことだ!!」と人々が怒ったことを中心について、やや批判的に語る内容が多いのが特徴ですね。
とはいえ、世の中の理不尽や、おかしな点について嘆いたり怒りを抱くのではなく、良くいえばユーモアに、悪くいえば少し皮肉っぽく語ります。
こんなブログを書くぐらいですから、私も少し、正義が苦手な部分があります。私が障害持ちであり、一般的に見れば正しくない方法や行動をとらざるを得ないときに過去に激しく糾弾されたことがありましたので(そういう注意をする人はもっと怖そうな人やもっと悪い子としてそうな人はあっち向いてホイやってたような気がしますけど)
とはいえこの本は必要以上に正義を排除するのではなく、少し極論じみた考えや、若者への同情、そしてちょっとだけ自分の変わった部分などを紹介して、ゆるい空気感を持つ本ですので、肩の力を抜いて読めるでしょう。
しかしながら鋭さはなかなかのものであり、”正義”を盲信することの危険性、そして、自分の頭で考えたり、他者の視点で見ることの重要性を見つけることができました。
ちなみに、著者公認でこの本についておかしなところがあったらそれはそれで突っ込んでいいと最初に書いてありましたが、当記事ではやりません。それは他の方におまかせします。
おすすめポイント
正義への黄色信号
冒頭で正義について批判的な意見を述べたものの、なんだかんだで世の中、悪いことを聞いたり酷いことを言ったりする人を見ると条件反射的に怒りが湧いて、反論したくなる気持ちもわかります。自分が好きなジャンルだったらなおさらでしょう。
そんなときに強く「けしからん!!」とか「やめろ!!」と強く止めるのではなく、「注意!!」と少しだけ引き付ける印象があるのがこの本です。
「○○で炎上したというが、しかし過去に似たようなこういうこともあったけど……」
「いやいや、確かに○○はよくないかもしれないが、他の国で考えてみると……」
といった穏やかで、しかし、明確に「なるほど、たしかに」と言ってしまいそうになる鋭い文章がまとめられています。
人は一部の人を覗いてですが、決して誰かを傷つけたいだけで発言しているわけでもなければ常におかしなことを言いたいわけではありません。
少しだけ止まってみて違う視点やあるいは過去の事例から考えてみてみると思わぬ発見があるものです。
それでも「これはやっぱり悪いことだ!」となって批判するのはもちろん自由です。しかし、この本の中にたくさんある黄色信号を何度も見るというのは非常に大切な訓練になるといえるでしょう。
本音と建前への理解
黄色信号で止まって、著者の解釈の言葉を聞いてみると、なんとなく、正義の言葉の本音や建前が見えてきます。もちろん、邪推に限りなく近いものですが、少なくとも、”誰彼構わず救うようなただの正義”ではないことがわかってきます。
「政治に興味を持ってほしい」は「自分に投票してほしい」だったり
「学生が危険だからテレワークを推進してほしい」は「教師が学校に通いたくない」だったり。
書籍の中にも記載されていますが、正義感を利用するような”なにか”が裏にいたりとついつい考えたくなります。
最もそれが悪いと言ってしまうのもまた正義であり、この本で言う恐怖の対象です。そもそも邪推で勝手に相手の本音に感づいて避難するなど、下手したら正義をかざして暴れまわる人よりよっぽどたちが悪いかもしれません。
大切なのは、あなたのお人好しさや、正義心をなにかに利用されたりしないようにしたいということです。もし本音の部分まで読んでそれでも正義に従うというのならば、私はそれで良いと思っています。
更に言うのならば、あなた自身も理解していない、あなたの正義という建前、そしてあなたが望むものという本音に気づくことができるいいきっかけになるかもしれません。
私もとあることに気づきましたが……ちょっと書籍の趣旨からは逸れるので省きます。
正義は慎重に
「結局、正義はどう扱えばいいの?」と聞かれると、本の中で答えは出てません(正義が怖いというのが答えといえば答えですが)というより、だいたいの問答において実は答えは出てません。
しかし、一見無責任ながらも誰かの熱くなった正義をじっくり冷やしながら自分の主張を語る本文そのものこそが答えなのかもしれません。
すなわち、正義を少しだけ恐れ、でも何も言わないのではなく、ちょっとだけ冷静になって色々な視点で考えてみること。
自分に対しても誰かに対しても、これが正義との程よい付き合い方のような気がします。中途半端で卑怯者のような印象を受けるかもしれませんが、そもそも全員に対して敵味方を決めるような人生はとてもつらいものです。
正義を振りかざすのが良くない理由は2つです。1つは、単純にやられた側が忘れないこと、そして2つ目にやられた側に復讐される可能性があることです。(正論をふりかざしてはいけないというのはこの本でもありました)
この国には確かに言論の自由があり、何を言うのも自由ですが、一方で自由というのは責任があってのものということを思い出すのにいい本でもあります。(実は自由についても主張している部分があります)
著者のように「こういう考えもあるけどねー」みたいな感じで口に出さずにそっと静かに考える……意外とちょうどいい塩梅なのかもしれません。
最もあまりそういう生き方をしていると今度は「イソップ童話のこうもりみたい」と言われてしまいそうな気がするのが難しいところではありますけどね。
やはり正義とは難しいものなのかもしれません。
注意点
割と著名な方の実名を出して言っていることに突っ込んでいたりするので、驚きました。
私は特に不快感などはありませんでしたが、読むときは少し冷静なときに読んだほうがいいかもしれません。
特にとある知事を名前で呼び捨てにするのは恐れ入りました(それも何度も)
最後に
1回あたりの主張は非常に短いものの、かなりの一つ一つの主張にパンチ力のある本です。
繰り返しますが、別にこの本を読んで「正義を嫌いになれ」とか、「正義を振りかざすな」と言うつもりは一切ありません。そういった主張もまた結局は正義の押し付けになってしまいますから。
なんだかんだで人が正義について強く主張するのは大きなプラス効果があるのもまた事実、塩梅について語るのは非常に難しいと言えるでしょう(最近だとこの本などが人の正義が表に出ることの効果をあげています)
大切なのは、正義にはどれだけ避けようとしても「責任」が伴うことです。
だからこの本のように黄色信号で一度止まってみてください。
その正義は本当に必要なものか?一度飲み込むべきか、そもそも別の方法がないか。
できなければ、あなたの正義は本当に怖がられるものになってしまうのかもしれないのですから。
過去本の紹介
せっかくですので過去に紹介した正義に関する本を紹介いたします。
『正しさを疑え』
疑えとはいいつつ、あまり刺々しくない優しめの本です。
自分の正しさについてマッサージする感覚で読めます。
『絶対正義』
こちらは小説となります。
苛烈なる正義とはどういうものか。嫌というほど知ることができます。
※ちょっと昔に書いたものですのでだいぶ書き方が違います。
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