おすすめできる人
- 人を叱るのが苦手な人
- 自分は天才ではないと思っている人
- 様々な説得の仕方を知りたい人
おすすめできない人
- 人を叱るのが得意な人
- 飴と鞭の戦略が好きな人
- 綺麗事が苦手な人
※ポジティブクリティカルとは一見正しいことを疑ってみようという言葉です。
今回のポジティブ・クリティカル
正しければ人は動く
そして
結論
正しさではなく感情で動かせ
最初に
人は一人では生きてはいけません。これは喜びの象徴みたいな言葉でもあり、一方で呪いのような部分もあります。一人でいれば煩わしいこともない反面、できることは限られます。
そのため、大抵は好むと好まざるとにかかわらず様々な人と関わることになります。そして、多くの人は意見の食い違いを経験することになるでしょう。
「どうしてこれが正しいの言うとおりにしてくれないんだ!」
「なんで私はこんなに頼んでいるのに、やってくれないの!?」
そんな苛立ちは誰もが通る道です。「正しいはずなのに」「一番いいやり方なのに」それでも相手は受け入れてくれない、そんな経験は誰もがあるのではないでしょうか?
あなたが正しいか、正しくないか、そんなものはいくらでも変わるので私には当然わかりませんが、一つこんな説があります。
「正しさ、理屈では人は動かない」
もちろん、この説が絶対とは言いませんが、あなたもこんな経験ありませんか?相手が一般的に正しいと思われる説を唱えてきたときに、「こっちはこういう事情がある」「私はこうなんだから仕方ない」と言って受け入れられないということが。
言い換えると、つまり「この場合は私が正しい」ということになります。逆説的なようですが「間違っているかもしれないけど私はこうしたい」というのも結局は「私が正しい」と言っているようなものと考えてもらっても構いません。
もしお互いがこのように思ってしまえば、正しさのぶつかり合いになります。そして悲しいことに仮にあなたの正しさが勝ったとしても相手側が動いてくれるとは限りません。それどころか、怒りをかい、恨まれ、期待していたものとは逆の結果になってしまうことすらありえます。
では、どうすれば人を自分が望むように動いてもらうようにできるのでしょうか?そのやり方を紹介するのが下の本です。
カーネギー流、人心掌握術、あなたの価値観をひっくり返します。
どんな本?
どんな悪人だろうが、独裁者だろうが、「自分は正しい」と信じ、誰かに否定されたら必死で身を護る方法を考えてしまうもの、そんな前提をもとに、様々な”人の動かし方”について書かれている本です。
叱ったり怒ったり脅したりと誰が見てもわかるようなネガティブな方法は避けるのですが、読んでいけば分かる通り、一見正しいというような方法も使いません。
では、どうするのかといえば、「いかに相手を気持ちよくその気にさせるか?」この一点に集約されます。「私が正しい」「お前が悪い」といったシンプルな主張ではなく、かといって、「私はこうしてほしい」「あなたはこう動くべき」と身勝手な願望を述べるのでもなくちょっとした、しかし相手のことを全力で考えた言葉で、相手を動かす。そんな奥義とも呼べるやり方が詰まった本です。
遠回りのようで近道、一見回りくどかったり、面倒だったり、もっと言うのならばそれは「自分の負け」を象徴する行動のようですが、しかし、その結果は、自分も相手も幸せになれる道だとしたら、興味はありませんか?
おすすめポイント!
ことわざで言うならば柔よく剛を制す、急がば回れ、損して得取れ、そして負けるが勝ち
相手をすぐに認めさせようとするとどうしても正論での正面突破、あるいは時間をかけない直通の最短ルートを通りがちです。もちろん正しいこともありますが、うまく行かないときこそ、知略を巡らせた考えや迂回ルートを試すときではないでしょうか?
この本に紹介されていることも多くは、一見、交渉事とは何も関係ないことに時間を費やしたり、あるいは無駄なことをやっている、さらには自らの負けを認めるような行動を取るといった損をしたりただ自分が嫌な気持ちになるだけの行動をしているように見えます。
しかし、思い出してください。
もともとの目的は「人を動かすこと」です。ついつい達成するためと人が無意識に求めてしまうもの、例えば、自己のプライドや勝利を決して求めず、そして無意識に避けてしまうようなこと、例えば、敗北や相手の望みを追求し、結果として非常に高い成果を上げるのです。
自分主体から相手主体、win-loseからwin-winへ。本来最善とも言える方法ですが、なかなかできる人はいないのは私の人生経験上でもよくわかりました。
理屈を聞くだけでは半信半疑でも、次にあげる例の相手側の気持ちになれば「こんなことを言われてみたい」「言ってくれた人のために動きたい」と思えるのでしょうか?
何よりこの本のやり方がなかなか有益であることは、上記で述べたこれだけのことわざが語っています。ことわざだけ聞いてもそんな馬鹿なと思ってしまうかもしれませんが、この本を読み勧めていけばこれらのことわざも実があることに気がつくでしょう。
偉人から一般人までの面白エピソード
相手を正さない、否定しない、尊重する、シンプルに言えばこれがすべてですが、実に様々なエピソードをあげています。
偉人ですら悩むような戦争や政治、企業の会議方針という非常に大きい問題から、よくある一般家庭での子育て、夫婦間の揉め事、ご近所トラブル問題などそれはそれは様々なエピソードをあげており、見覚えがあるものもあるでしょう。
つまり言ってしまえば、大いなる偉人でも参考になるほど高い効果があり、そして身近な人達でも活用できるほど実現性があるということでもありますね。
そして、最初に失敗例を上げることが多いのですが、これがびっくりするほど多くの人が取ってしまいがちな行動です。具体的には怒る、叱る、自分の主張だけ述べる、相手のことを考えないなどなど……もちろん、普段から多くの人が間違った行動をとってしまうというわけではありませんが、状況が逼迫していたり、あまりにも理不尽な目にあってしまうと冷静ではいられないのが人の性です。
しかし、そういった行動をとって物事がうまくいくことは果たして多いでしょうか?もちろん、うまくいくこともあるでしょうが、どこかでしこりを残してしまうことも多く、そしてもっとひどい状態になってしまうこともやはり少なくありません。
作中の登場人物のように、冷静さを取り戻して相手のことを思いやれるか、それこそが相手を動かす秘訣なのかもしれません。
人を大切にする
では、この本はお世辞を使いまして人を操ろうとするあざとい、ずるい、言ってしまえば卑怯な本なのでしょうか?
もちろん違います(そもそも冒頭でお世辞を言っては駄目、心から思えることを言うべきと書いてあります)
この本は人を大切にすることで、人をその気にさせ、そして自分と相手を両方幸せにするためにどうやって人に動いてもらうかについて書かれている本です。
もちろん、あなたが頑なに主張する”正しさ”も二人を幸せにする可能性はあるでしょう。しかし、相手に抱かせた敗北感が致命傷になり、幸せな気持ちになることができず、結局はあなたが恨まれどちらも不幸になる……そんな最悪な結末もありえます。
あなたの勝利はあなただけを幸せにしますが、勝利や敗北という観点から抜け出し、多少遠回りになっても自分が望むものと相手が望むものをどちらも見つけて幸せになる道を見つける……
勘違いしてほしくないのですが、勝利を否定しているわけでもなければ、正しさを否定しているわけでもなく、さらに言えば、あなたに常に耐えろと言っているわけではありません。
あなたにとっていちばん重要なもののため、それ以外を一度外に追いやり、そしてその分だけ相手のことを考えるのです。
人を大切にするというのは自己犠牲ではなく、あなたのための問題解決の手段なのです。
注意点
やはり、少なからず綺麗事の部分はあります。あくまで成功した事例を多く紹介しているのであり、当然うまくいかない、失敗した例もあるはずですが、この本では少なくとも取り上げていません。(ちなみに両学長から聞きましたが、こういうものを生存者バイアスというらしいです)
理屈や理論を押し通すよりも、自分のわがままを通したい、あるいは、誰かが傷つくのを見たい、支配欲求を満たしたいだけみたいな存在も世の中にいることも否定しませんので、そういった方に通ずることはないでしょう。
「最善の動かし方」になりうることはあっても「最強のやり方」ではありません。知っていれば選択肢は増えますが、相手に通じるかどうかを判断するのはあなた次第です。
あと、twitterなどで「あなたのことを思っています」「尊重してます」みたいな感じの雰囲気を出す人は9割詐欺ですので気をつけましょう(経験談)
最後に
名著と名高い本だけあって読みやすい上に、読み応えがある本でした。
「当たり前」のことに最大の価値を生み出しているといっても過言ではないでしょう。
スローガンのように挙げられる「人を大切にする」「相手のことを重要視する」「相手の気持になって考える」というよくある言葉がありますが、どうもそのままでも自己犠牲を強いられるような感覚を覚え、反発する人が増えるのも無理のないことです。
この本を読み、正しく「相手を動かす」ための「人のことを考える」方法を学べば、決して自分の利益や感情を損なうことなく、それどころか、自分の望む方向へ、物事を進めることができるでしょう。
私も相手の正しくないとおもっても一端立ち止まり、相手のことを重要視する癖をつけた結果、相手のことをよく理解し、スムーズに物事を勧められる機会も増えました。
もし、「正しい事を言っているはずなのに……」と悩んでいる方は試しに読んでみてください。きっと新しい選択肢が広がるはずです。
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