「死のさらに先」のネガティブまでぶっ飛ばします!『死神と天使の円舞曲』(著:知念実希人)を読んでの感想、おすすめポイント、ちょこっと欠点などを紹介!!死神シリーズ堂々の完結!!また、レオやクロに会えますよ!!

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ネガティブ・トレジャー!

この本を読むと……

  • 超常的ながらも人間を愛する存在の優しい気持ちを知れる
  • 人というものを客観的に見つめ直せる。
  • クロとレオにまた会える

おすすめできない人

  • 『優しい死神の飼い方』『黒猫の小夜曲』を読んでいない方(絶対に先に読むことをおすすめします)
  • もしくはこの2冊があまり楽しめなかった方
  • このシリーズをミステリー要素を大きく期待している人(おすすめできないというほどではありませんが、少し合わないかもしれません)

最初に……の前に

上記2作品を読んでない場合は必ず読んでからこの記事、及び当書をお読みください!!先にこちらを読んでしまうと読んだときの感動や驚きが薄れてしまう可能性があります(正直記事を見なくてもいいので本は絶対読んでください!)

それぞれ、レオやクロについてよく知り、彼らが何を見て、何を感じたのか、そして、何より二人(二匹?)が大切だったものをすべてを読み取ってから読んでください。

今回の物語はすでに失われてしまったものの、二人の中に残った絶大なものが前提となるのですから……。

大丈夫ですか?それではいきますね

(本当に)最初に

※画像はイメージです。本編の二匹はもう少し喧嘩しています。もう少しだけね

今回、紹介する本は、『死神』シリーズ第三段になります。

おおまかなシリーズのあらすじを語ると、動物に憑依した死神たちが、人の思想の中に入り込むという不思議な力、そして卓越した頭脳で、死を前に絶望した人々の誤解を解いて未練から解き放ち、希望を与える物語、といったところです。(ちゃんと上の約束を守っていただいた方には「死神」ではないことは知っていると思いますが)

「死」という人が絶対に避けられない恐ろしいものについて向き合いながらも、ミステリーらしい神秘的な雰囲気と人の友情や愛情を描いた心温まるファンタジーを兼ね備えた物語となっております。

今回は、前前作の主人公だったレオ、そして前作の主人公だったクロの二人の物語となります。これまでのように「死」について語りつつも、今度は二人自身の存在意義について問い直されることになるのです。

人間に関する、いえ、人だけではない、全てに該当する「存在意義」についてです。

では早速お話していきましょう。

アイキャッチ画像とあまり明るさの差が出せませんでした(汗)

これも天使の導きでしょうか。

あらすじ

前作で姉の未練を解消し、その妹である少女の家に居候している死神の力を持ち、黒猫の姿を借りている死神、クロ。街を探索しながら死神としての仕事である地縛霊になりそうな人間を探していました。

ある日、「山にいくと人魂が現れる」という噂を聞きつけ、現場に向かっていくことになります。

そして、一人の自殺寸前の料理人に出会い、壮絶な生き様を目の当たりにします。いつもどおり、死神の力と卓越した状況整理能力から真相を導き出し彼を救います。

しかし、希望を取り戻しかけた青年に、さらなる不幸が訪れました。そして衝撃的な不幸の現場には同僚であり、現在は犬の姿を借りながら病院で暮らしているレオの姿がありました。

彼もまた、とある女性を救いましたが、ある約束により、同じようにこの場所に訪れ、そしてクロと同じように佇んでいたのです。

そして二匹(二人?)が解決した事件は恐ろしい事件の幕開けでしかならず、彼らは大きな闇と戦うことになるのです……。超常的な存在である彼らですら、決して他人事ではない大きな出来事に……。

主な登場人物

クロ

『死神』と呼ばれている存在の一人であり黒猫の体を借りています。本当の名前が発音できませんが前作で出てきた大切な人から与えられたクロと言う名前を名乗っています。紳士的ですが、ちょっと外国かぶれ感があり、理屈っぽいところがあるといえるでしょう。前作の妹だった少女と居候しています。レオ曰く阿呆猫

猫のネットワークを駆使したり、飼い主のパソコンからインターネットを活用したりとなかなかに技工派です。ただ、体は猫なので力が弱かったり、水が苦手だったと少し弱々しいところもあります。

山で自殺寸前まで追い詰められていたとある料理人を救ったところから物語は始まっていきます。

レオ

こちらは前前作から登場しているゴールデンレトリバーの体を借りた「死神」です。彼もまた、大切だった人からもらったレオという名前を名乗り、人生最後の場所を過ごす場所であるホスピスで

どちらかといえばクロよりまっすぐとした気質な持ち主であり、物事に真っ向勝負を挑み義に厚い存在です。クロが親切な外国の紳士だとしたらレオは日本の義理堅き武士といったところでしょうか。クロ曰く馬鹿犬

体が犬なので、クロより運動能力が高く、文字通り鼻も利くため、行動力で勝負できるタイプと言えるでしょう。もちろん死神の力と優秀な頭脳もあるので、多くの人を救ってきました。

ただ、文明の利器には疎い部分があったり、とある人に正体を悟られかけたりと不器用な面が目立ちます。

心残りがある人達の魂を救っていく中で一人の女性を救うことになります。そして、その少女に友達だった”彼女”の面影を感じ、見守ることを決意するのですが……。

見どころポイント!!

レオとクロの変化

人間社会にどっぷりとハマってしまったレオとクロ。どこかまだ人間に対しては傲慢な態度を見せるものの、やはり一緒に過ごし、そして今はいない大切な存在、そしてそれぞれが残した人たちと過ごしているうちに、次第に人に関する理解と感情は大きくなっていっています。

友達だったそれぞれの大切な人のことを考え、死やあるいは地縛霊となってしまう人間を止めることも、かつてのように『ただ義務だから』という理由ではなく、それぞれの大切な人を思い浮かべ、そして彼女たちの思いを受け止めた結果生まれた感情から行動するようになります。

しかし、全ての物事には長短があるのは当たり前、かつて、不要とまで言われたその感情の変化が今作では彼らを苦しめることになるのです。もはや捨て去ることは考えられないとはいえ、「主の配下としての務め」を忘れたわけではありません。

もし2つのうち本当にどちらかを取らなければいけなくなったとき、彼らはもとに戻るのではなく、さらなる変化を強いられることになるのです。

さらに広がる世界観

今回は人の「死」についてだけではなく、レオとクロ自身の存在、そして二人の考えを今一度問いかける物語になっています。

彼らは「道案内」という自分たちの仕事について誇りを持っています。しかし、それぞれが今はもういない大切な存在に対する義理や愛のために、彼女たちが残した様々なものを見守る決意をしました。

いわば、人が彼ら『死神』に感情を与えたのです。

超常的な存在である死神たちに対して『生き方』と称するのはおかしいかもしれませんが、今まで人の死や人生を見つめ直してきて彼ら自身もまた、自分のあり方を問われることになります。

救済と結びつき

今回はレオとクロがそれぞれ人を救うことになりますが、それぞれが結び付けられないような大きな事件のきっかけとなりました。後述いたしますが、実は今回はちょっと救済要素は少なめです。もちろん、今までのシリーズと同様、人間の背景や、クロやレオの観察能力、そして思いがけない真相を楽しめるのは間違いありません。

しかし、今作では救済の力が思わぬ形に繋がっていくことになります。言ってみれば、クロやレオ自身の存在意義が危うさを秘めているといっても過言ではありません。

ただしかし、繋がりはそれだけではありません。

レオやクロのそれぞれ大切な人だった存在……一人だけでも大きかった存在ですが、繋がることでより大きな力になることを知っていくのです。人と人との繋がりもまた、今作の非常に重要なテーマといえるでしょう。

本来の人の強さであり、そして少しずつ、全くの無関係だったの死神の力にもなっていくのです。あなたも読んでいけば、人の力の意外な部分に気付けるかも知れません。

注意点

実を言うと、ミステリーという視点から考えると上記の二作品よりはだいぶ薄くなります。ネタバレになるので細かくは言えませんが、以前にも話したノックスの十戒、ミステリーの禁忌(詳細を話すと前作以上のネタバレになるので言えませんが)をさらに犯しているといっても過言ではありません。

今までとは違い、レオやクロの存在を深く知り、そして好きになったからこそ、先がわかってしまうということもあります。(私はそうでした)

もっともこの2つの存在を好きになったのならば、従来までのミステリーの楽しみを感じながらも壮大なファンタジーや様々な愛の形をめぐり知ることができるでしょう。

最後に

ややミステリー要素よりファンタジー要素が強くなりましたが、前作2冊を読んでクロやレオのキャラクターが好きになったのならばぜひおすすめできる本です。

かつてどこか「人を救う」という目標を持ちながらも「人そのもの」について淡々としていた彼らが様々な大切な人の残された思い、そして残された人々と触れ合う中で、変わっていく考えの答えを見せる総集編と言えるでしょう。

どちらかといえば今まで「死」について描かれた部分が強い作品でしたが、今回は「生き方」に強く焦点があてられているといってもいいかもしれません。

私は純粋に、またレオとクロと出会えたのが嬉しかったですし、ミステリー要素が少なかったのは残念でしたが、それ以上に強い思いが込められていたと思います。

ぜひ、前の2巻を読んで二匹の思いを受け取った方は、二人のクライマックスを見届けてあげてください。

余談

最近知ったのですが、著者の方は小説家兼医者みたいです。だからどうというわけではないのですが、たしかに病気の描写や死の表現、そして、人の痛みに歩み寄る能力が文章からも伝わってきた……なんていったらにわかになってしまいそうですが、ひとまずこの最強に二足のわらじを履いていることは劣等感が狂いそうなほど尊敬いたします。

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