お勧めできる人
- 前作が気に入った方
- 一般的な善に少しでも疑問を持ったことがある方
- とにかく人と違う考え方をしたい方
皆様、数回前に紹介した「神様とのおしゃべり」は覚えていらっしゃるでしょうか?
もし私の記事を読んでいただいた方はありがとうございます。見ていない方は……。まあ特に問題はありませんが前の記事を見ていたほうがより楽しめると思います。(こっそりと宣伝)
今作はその続編にあたりますが、直接的なつながりは特に何もなく、今作から読み始めても特に支障はありません。
相も変わらず、みつろうさんが脱力感のあるおしゃべりをとある相手とするだけです。
今回はお話し相手は……。
前作で神様から様々な常識外れで、荒唐無稽で、でも説得力もまた強いお話を聞いた男、さとうみつろうが今度は悪魔から様々な悪の考え方を教わります。
悪魔の教えって悪いこと?いえ、悪と悪いは違うということからまず前提としておいてください。(あくまでこの本の中では、ですが。
)あくまだけに
あらすじ
まだ、神様にも出会っていない就職間際のみつろう、古本屋でお金も恋人も欲しいものはすべて手に入るというあからさまに怪しい本にほいほいつられました。
本通りに儀式を行いましたが、何も出てきません。ばかばかしくなってそのまま寝てしまい、それはそれは長い年月が経った後……。
「待たせたな!!」
ここで悪魔が登場。
お前を悪の手下にしてやろうという言葉にみつろうは(そもそも呼び出すのに何年かかってんだと突っ込みつつ)道徳的に嫌だと言います。
「道徳が人を本当に救えると思っているのか?悪のパワーだったらより確実、スピーディ、簡単に救えるぞ」
それでも「やっぱり嫌だ。俺は善に生きる」と息巻くみつろうですが……。
「でも、3億円くれるなら考える!10億だったら即決でオーケー!」
「世界の富と名声を与えてやる!!」
「ついていきます!」
※実際はちょっと違いますが大体こんな感じです。
そして、即物的な欲望につられたみつろうは悪魔の教えを聞いていくのでありました。もっとも……今回お話を聞くのは、このみつろうだけではなく、違う時間のみつろうも聞くことになるのですが……その意味は呼んでいくとわかります。
よりスケールアップした常識外れの世界と理論
今回のお話も脱力感や悪魔に「消すぞ」と脅されても臆さないみつろうの脱力したコントのようなやりとりはそのままに、より深く、より奇想天外なお話が繰り広げられます。
さらに、ストーリー性もわずかに加わり、先の見えない展開を楽しみつつ、悪魔とのおしゃべりを楽しむことができます。
ただ、内容は前回よりもやや難しく、いろいろと奇想天外な話をしつつ、納得できるような独特な例えやエピソードで根拠を説明してもらえてますが、一般的な道理で理解しようとすると混乱してしまうと思われます。(前作と同じく、あまり深刻に考えすぎず、ひとまずは受け入れてみて、それから拒絶するかしないかを考える、という方法をお勧めします)
言うまでもないことですが、犯罪行為、もしくは人を傷つける行為を助長するような本ではないのでその点はご安心ください。(ちなみに本によるとそれは○です。○はネタバレになるので言いません)
前作で壊したのはあなたの「常識」ですが、今回は加えて「正しさ」も破壊しつくします。その破壊力はもはや爆弾というよりは兵器です。
この兵器ぐらい荒唐無稽です。
本当の悪とは
悪と悪いは違うということは前提で話した通りですが、一般的なイメージではない悪の側面を見せてくれます。
最も本書は別に善や悪についての意義や議論を問いかける本ではありません。それよりはむしろ、より大きな世界、より重要な真髄を理解するには「悪」でなければいけない。ということから「悪」になることを勧めている本です。
もっとも難しいことを何かしなければいけないと言っているわけではありません。まずは少しだけ受け入れることからはじめましょう。
やはり最初のうちは抵抗があると思います。ましてや「悪」と名のついている以上、認める大変さは前作以上かもしれません。信じたくないこともいっぱいありますし、受け入れたくないこともはっきり言えば書いてあります。
しかし、読んでいけば、「悪」の力の凄さに目覚めていくでしょう。悪いことと思っていたことを受け入れたり、ただ心情で許せなかったことが許せるようになったりするかもしれません。そしてもっと大きな力も……。
総評
あなたの信じている善ってなんでしょうか?こう聞くと色々な答えが返ってきそうです。では、あなたの信じている悪ってなんでしょうか?
このような問いそのものが禁忌とされがちな世の中、もう一度、悪という存在を見直してみませんか?そして正しさというものも同じように考えてみませんか?
人を傷つけることは悪いことであっても必ずしも悪の仕業ではありません。善人だって人を傷つけます。ただの見解の違いなのです。
とはいったものの、先にも言いましたが単純な善悪論の話ではありません。
悪魔の力であるこの本を活用すれば、今まで見えなかったものが見えてきます。不可能だって可能になるほどの凄い力です。もっともすぐに活用するのは難しいかもしれませんが、あらゆる可能性を秘めているのは間違いありません。
タイトルでもみつろうの説得でも使われた「世界中の富と名声を手に入れる」ですが、この本を読んでいくと、できるとは思います。悪魔と契約したみつろうだけではなく、読んでいる私たちもです。ただ一方、できてないとも言えます。これがどういう意味なのか、ぜひ読んでみてください。
ヒントは人間スーツです。
コメント