『キノの旅』(著:時雨沢 恵一):「世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい」この旅はあなたの善悪、思想、そして価値観を大きく変えます。不思議な世界へ招待しましょう。

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こんな悩みを抱えていませんか?

  • ライトノベルを読んでみたいけど、何が良いかな?
  • ちょっと変わった小説が読みたい……
  • 自分の中の考えを変えたい……

世界を旅する二つの存在が、あなたの中に潜む欺瞞や虚構を撃ち抜きます。

最初に

さて、いよいよネガティブ・コントローラー、ライトノベルの部が始まりました。ブログのテーマに合いそうなライトノベルが少なくて、なかなか紹介できなかったのですが、現状何冊か候補がありますのでそちらから紹介していきます。

さて、今回紹介するのは

『キノの旅』

です。

名前ぐらいは聞いたことがあるという方も多いかもしれませんね。

私がライトノベルを紹介するなら絶対にこの1冊から始めると決めていました。

どんな本?

かなり古くから続いている1話完結型のライトノベルです。そして2020年までずっと巻数を出し続けており、まだ完結はしていません。

見た目は幼めで可愛らしいですが、恐ろしい銃の腕前を持つ旅人、キノと、なぜか喋るモドラド(バイクのようなものです)、エルメスが送る二人旅が基本となります。

彼らが巡っていく国はどこかおかしな部分が多い国が多いです。しかし、話を聞いてみると、人々が必死に考え奇妙とも言える結論にたどりついたことが感じられます。

もちろん、ファンタジー色強めな世界観で、現代からかけ離れた国も登場しますが、「もしかしたら現代にもどこかにあるんじゃないか?」と考えてしまいそうな国もありますね。

そして、2巻以降からはさらに、謎の二人組である(ただしすぐ正体がわかります)師匠相棒による二人旅、そしてキノが途中で出会い、旅をはじめることになるシズとこちらも何故か喋る犬であるの旅も始まっていきます。

それぞれのキャラクター達が送る、見ていて飽きない世界観、そしてそれぞれが個性を持った波乱万丈の旅を繰り広げます。

ちなみに時系列は順番に書かれてはいません。しかし、特に混乱することはなく、逆にキノ達がどうして今の状態になったのかあるいは今この話を読んでいるときはどのような状態なのか考察する楽しみもあります。

おすすめポイント!

殺伐とした雰囲気もありながら王道的なファンタジー、そして哲学的要素が重なり合った物語は今でも色褪せない独特の面白さを持っています

善悪ではわからないキャラクター達

私が思う当作品最大の見どころです。

人の必死の頼み事を淡々と受け流したり、本当に敵と判断したら銃を向けることに一切ためらいがなかったり……キノも単純に善悪というくくりでは考えられません。

基本的にドライながらも情が捨てきれないキノ、ある種、わがままとも言える合理性を追求する師匠、そして、情と理性に揺れることが多いシズ……それぞれの全くタイプの異なる三人のペアですが、中には同じ展開でそれぞれが別の選択肢を出す展開もあります。

1巻ではキノとエルメスしか出ませんが、まず二人とじっくり付き合ってみてください。そうすれば、作品の面白さが大体わかっていきます。

当巻からすでに人々が基本的に肯定的に思う優しさ、平等、平和、仕事に対して、皮肉とすらとらえられてしまいそうなネガティブな答えが待っています。

しかし、ただ暗い話というだけではなく、旅人であるキノに優しくしてくれる国や、旅人に厳しい国でもキノを助ける人はいたりと決してただ厭世的な物語ではありません。

善人も悪人も色々いる。そんな当たり前すぎることをあらためて考えさせられます。

読めば、自分が持っている善悪の価値観を疑いたくなるでしょう。そして捨ててもいいですし、もちろんあらためて自分の価値観を強めても構いません。一度疑うことが、新しい価値観に繋がっていく可能性を秘めているのです

ミステリーレベルに先が読めない展開

キノ、そして残りの二人組もたしかに強いですが、この物語は、必ずしも彼らが旅で出会う出来事に干渉してハッピーエンドとなるわけではありません。

強すぎる故に、キノや、他の旅人達も不安感はないのですが、彼らが出会ってしまった人たちがどのような結末を迎えるかは全く想像がつかないのです

善人か悪人かは関係なく、キノ達の行動で大きく運命が変わってしまうことあれば、あるいは何も変わらない可能性もあります。まるでそれこそが旅の醍醐味と言わんばかりです。

中学生から大人まであらゆる人に勧められる理由でもあり、こちらを飽きさせないという理由でもあります

キノは様々な国や人に協力はしたり、敵対したり、あるいはただ傍観します。恐ろしいといえるほど実力を持っていながらもただ、旅を続け、色々なものを見て、そして何かを考え続けます。

まるで読者に「あなただったらどうする?」と問いかけるように。

ハッピーエンドが納得がいかなかったときこそ、楽しみながら成長できるチャンスかも知れませんね。

1巻のそれぞれの話についてちょっとだけ語ります。

今回は特別編として一巻のそれぞれの物語について私の感想をネタバレにならない程度に触れていきたいと思います。もし私の言葉が気になったらぜひ読んでいただきたいです。

面白いだけではなく、色々と自分だったら?の過程がしやすいので考察のしがいがあります。

ただ、今巻は「コロシアム」を除いて皮肉的な話も多いです。

人の痛みのわかる国

優しさ」に対する一種の極地、そして皮肉が感じられた物語でした。現実世界における高度経済成長の例などを考えても人類の進化は犠牲はあるといいますが……。進化することのネガティブさも考えないといけませんね。

多数決の国

「平等」に対する皮肉ですね。極端すぎて危険じゃないものなど、この世に一つだってありません。そして、最後のキノの皮肉が最高です。きっと二分の一だけでは世の中は分けられないのでしょう。

レールの上の三人の男

「働くこと」に対する皮肉を感じました。切ないというべきか、愚かというべきか、哀れというべきか……しかし、なぜ自分が働いているかの理由ではなく、意義を考えなければ誰でもこうなってしまうかもしれません。

コロシアム

全体的にバトル路線の物語であり、かっこいいキノが見れます。そして一部の人には衝撃の事実が明らかになります。そしてシズと陸の出会いの回でもあります。皮肉は薄めですが、あるとしたら……「支配」でしょうか?

大人の国

「大人」への皮肉です。苦しいことを我慢してやりたいことをやらないでただなにかの観念的なものに従うのが大人でしょうか?多分、違うと思いますけどね。

平和な国

平和に対する最大級の皮肉です。平和というのは、”傷つく人がいない”というわけではないんですよね。きっと。

終わりに

1話完結でさっぱりと読めるので読者初心者にもおすすめできる一方、その独特の世界観、そして考えさせられるようなテーマは子供でも大人でも唸ってしまうような一面もあり、読書慣れした方も楽しめる作品の一つです。

そして、当ブログテーマである、ポジティブの負の側面、ネガティブの正の側面に触れている部分があり、無意識に抱いてしまっている全肯定や全否定を覆すのにも大きく役立つことでしょう。

端的に言うと、それこそ、「旅に出たかのように視野が広くなれる物語」ですね。

20巻ありますので全部読むのは相当大変だと思いますが、正直、バラバラに読んでもそんなに問題はありません(ただし、シズ編は、途中で加入するキャラが1名いますが)

私は全ては読めてはいませんが、1巻を久々に読み返して十分楽しめたので全巻読破を目指そうと思います。


面白かったらお願いします。

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