こんな方にオススメ!
- 「アクション映画が観たい!」
- 「王道な映画が見たい!」
- 「運命と戦う人が見たい!」
この映画を見れば……
「超エキサイティング!!」となります(古いネタでごめんなさい)
最初に
人が人であるためには、その人がどういう記憶を持っているかというのは大きな主軸になります。
もちろん全てとは言いませんが、学歴、家庭環境、人間関係、人生経験といったぐあいに、何が判断の根拠で、何が出来るのかというのは「人」あるいは「人の能力」を表していると言っても過言ではないでしょう。
完璧な人間なんて存在しないというのはよく言われますが、いずれかが弱いと人はとたんに不安になってしまうのはよくあることです。もっと言うのならば、強いと思っていたのが弱かったり、最悪なパターンでは自信があったものが世間的に言わせるならほぼないも同然と気づいた時、人は絶望に近い不安を感じるのではないでしょうか?(大体はコミュニュケーション能力が該当します)
要は「記憶」と「力」というのは違うようで、また同じようで、しかし間違いなく密接に結びついているものと言えるでしょう。
さて、今回の映画のお話ですね。
一つ二つではなく、「人」を表す記憶の多くを失った時、どうなるのでしょうか?不安は当たり前に感じるでしょうが、答えを見つけてあがけるだけの力は一体どこから湧くのでしょうか?
とまあ大仰に語りましたが、記憶喪失のジャンル自体はよくありますね。ですが、彼が失った記憶はやや恐ろしい秘密を秘めているみたいです。
あらすじ
船から一人の男が引き上げられました。背中に弾丸跡、そしてお尻に銀行口座を示すカプセルを埋め込んでいるという明らかに只者ではない雰囲気を醸し出しています。
船員に助けられた彼は、自分が何者かも思い出せず、ひとまず、船を降りて銀行へ向かうものの、道中で行動を咎められた警察をいとも簡単に倒してしまいました。
そして、銀行にたどりつくと早速荷物を見てみます。
自分の荷物から名前が書かれたパスポートを見つけてひとまずほっとする主人公ですが、驚くべきことに、別のパスポートも出てきました。それも一つでは有りません。3つ、4つとドンドン出てきます。しかも全てが別の名前であり、そして全てに同じ自分の顔写真が貼られていました。
一体、彼は何者なのでしょうか……
超人じみた能力
記憶を失いながらも、体に染み付いた習慣が全く抜けていない主人公である「男」(名前がちょっとネタバレに近いのでひとまずこの表記で書きます)生きる上で必要な能力と、生きるだけなら不要な能力を兼ね備えていました。
その辺りのちょっと強い警察官やあるいは刺客程度なら戦うと相手にもならず、そして並外れた危機管理能力からヒヤヒヤ思想なシーンからも逃げ出せます。
記憶をなくしていても知識はなくしておらず、そして膨大な知識が自身の能力を「異常」だとわかってしまうということが男をより悩ませます。戦うたびにも悩み、不安を感じ、そして何度もふさぎ込むほど戸惑っています。
やはり「力」があったとしても、その源の「記憶」がない、あるいは「記憶」が不安定だと人は不安に感じてしまうものなのでしょうか。『アヴェンジャーズ』などのヒーロー物に関してもやはり力をもつヒーローの悩みなどが描かれていますが、彼の場合は、さらに記憶喪失という痛みさえ追加されるため、苦悩は計り知れません。
しかし、一方で、その「力」が手がかりでもあり、彼は逃げつつも戦い続け、必死に答えを探していくのです。果たしてその意志の強さは彼独自のものか、それとも別のものか……。
恐ろしき闇
物語は主人公視点と、そして主人公を付け狙う敵の2つのシーンで構成されています。いわゆる神視点で俯瞰して状況を見ることが出来るいった形です。
とはいえ、視聴者目線から見ても敵の存在はどういう組織なのかは推測するしか有りません。もっとも物騒な言葉や、明らかに表に出せない行動をしている辺り、あきらかにまともな組織ではないことがわかります
さらには警察を動かす、腕利きの刺客を雇う等、大きな力が裏に働いている組織のようです。また、主人公とも全く無関係とは言い切れないようで……。
少しずつわかっていく恐ろしい真実、やがて、視聴者の理解と「男」の理解がどんどん近づいていき、やがて一つになります。そして、その時こそ、男が何者で、最初に何が起こったかを知ることが出来るのです。
ちょこっとダメ出し
良くも悪くも王道感が強い映画でした。いくつも見ていると展開がやや読みやすく異部分はあるかもしれません。
Nテーマ「不安」について
さて、「不安」についてですね。記憶がないという不安定な状態の元、文字通りで主人公は不安だらけです。
もちろんここまでの状況に陥ることなんてないでしょうが、身近に落とし込むためにすごく簡略化して考えると「わからない」という状態のことですね。
「自分は本当にこれでいいのか」「もっと良い手段があるのではないのか?」みたいな考えを持ってしまうとなかなか立場が不安定になり、非常に強い不安に襲われることになります。
しかし、この映画のストーリー中に出てくる刺客達を見ていると「悩みなどない」などという雰囲気を出しつつも、どこか自虐的な雰囲気を持ちながらもためらいなくボーンを追い詰めていきます。
刺客、つまり殺し屋として「完璧」であるようで、どこか不完全さ、そしてそこからくる不安さが一方で彼らの弱さに繋がっている側面があるかもしれません。
人の生き方を否定するのはどうかと思いますが、少なくともボーンは記憶をなくしたことで刺客と同じような力を持ちながらも記憶を失ったことで刺客を客観的な視点で見ることが出来ることで新しい道を探すことになるのです。
完全な思うような存在になれないというのは人間の最後の防衛機能なのかもしれませんね。
最後に
非常に「王道感」のある映画でしたね。
とはいえ、主人公がいかに「巨悪」と向き合っていくか、彼は最後にどのような結末を迎えるかはなかなかわからず、見ててハラハラ感を感じることができました。
彼は、警察をも打ち倒す能力と、警戒心、観察眼、そして義理堅さも持っており、過去のことを考えず、何者かになろうとすれば大抵の人にはなれるでしょう。実際に偽装パスポートを大量に用意しているのですでに複数の人物を演じているぐらいです。
しかし、彼は、記憶をなくしたと同時に、「誰にでもなり得た存在」から「誰でもない存在」になりました。失ったものは大きいのは間違い有りません
しかし、「Nopain Nogain」という言葉があります。失わない限り、得られないものは確かにあるのです。タイトルにもある「アイデンティティー」は果たして彼が失ったものか、それとも新しく手に入れるものか、映画を見て確かめてみてください。
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