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こんな方にオススメ
- 「悪いことってかっこよくない!?」
- 「どうしてギャングになってしまうんだろう……」
- 「結局金を持っている人が強いんでしょ……」
最初に
今回はだいぶ短めのお話ですが、実際にあった経験を物語にしたお話です。
タイトルにもある通り、ギャングを抜けたとある国の青年、アンドレスさんの物語です。
「ギャングっていっても日本じゃなかなか考えられない……」
とおっしゃる方もいらっしゃるかも知れません。例としてあげるなら治安がすごい悪いところに育った子供は知らず知らずのうちに平然と犯罪行為に走りやすい……というイメージを想像していただけるとわかりやすいと思います。生まれによって環境が左右され、将来の道が悪い方向へ固まってしまうというのは日本でも数が少ないことはあれど、決して他人事では有りません。
最も、アンドレスさんも決して戦い続けたわけではなく、時に逃げ、時に従順し、時に膝を屈します。しかし、だからこそ、選んできた道と同じ道を歩まないことを、そして道は選択できることを知っていくのです。
これはあくまで私の願いですが、アンドレスさんのことを「戦いに勝った立派な勇者」でもなく、「罪から逃げた臆病者」というわけでもなく、ただ同じ人として等身の立場で観てほしいと思います。(私の個人的解釈では年下ですけど”さん”付で呼ぶぐらい私より立派な人とも思いますけどね)
とはいえ、そんなに難しくもなければ長い話でもないので、お気軽に、でも真剣に聞いてほしいお話ですね。
逃亡と旅、運命の選択肢
ギャングと深い関わり合いがある街の中でアンドレスさんは生まれます。小学校時代は貧しいながらも何気なく過ごせていましたが、中学生になってから日が少し立つと、ギャングに誘われます。
ギャングであった父親を尊敬したり、どこか反骨主義の側面もあったアンドレスさんは家族の反対を押し切ってギャングに所属することになり、下っ端がするような見張りの仕事や間接的ではありますが犯罪の手伝いなどもすることになります。
当時は戸惑いながらもギャングであることを楽しんでいたり、父親と同じようになれたことを誇りに思っていたりしていますが、やがて、「殺すこと」を命じられた時に彼は仲間たちとともに悩みます。
大きな勝利を掴むために、あるいは自分が死にたくないがために、誰かを代わりにすることを選ぶ仲間たちの中で、アンドレスさんは悩みます。「殺す」か「殺さない」ではありません。「殺さない」ためにはどうすればよいか……をです。
そして、ある出来事がきっかけで逃亡、そしてそのままギャングではない道、人殺しをしない道をするための旅に出ることになります。ギャングではなく、別の選択肢をつかみとった彼は旅の中でも様々な選択肢を選ぶことになります。
しかし、旅の中で彼は、常に良い選択肢を取れたわけでは有りません。しかし、最初の大きな選択肢は彼の運命を決めたと言ってもいいでしょう。
そして、後述しますが、彼の人生観を養った期間でもあります。
更生は決して楽ではない
アンドレスさん自身も自虐的に語っていますが、決して褒められることではないことを何度もやらかしています。麻薬、脅し、喧嘩、遅刻、逃亡etc……。
もともとギャングになることを決めた部分もあるため、どうしても風習が抜けきれていない部分があるのは仕方ないにしても、身近でいたらだいぶ眉をひそめるタイプの人間と言わざるをえません。
この本自体は短編にカテゴライズするほどですが、それでも「更生した」と呼べるようになるまでは決して短くは有りません。彼自身が生み出した罪や習慣は彼自身を苦しめ、そして治すには大きな犠牲や葛藤も伴いました。
ちなみに申し訳ないですが、私もいじめられっ子だったため、どうしても強気でオラオラくるような犯罪者……性格の人に冷たい目を向けるという部分はあります。
もっというのであれば、また、適当な更生で「はい、立派な人になりましたー」と語る方々に対してもちょっと考えられないです。更生は簡単にできるものであってはいけません。簡単に更生ができるならば、簡単に罪をおかしてしまうという理屈が成り立ちかねないからです。
しかし、死ぬほど苦しみ、かつての自分と向き合いつつも受け入れ、そして罪すらも誰かのためにできるほどの試練を乗り越えた人ならば、尊敬したいという気持ちはあります。
このアンドレスさんのように。
恐怖と畏怖
テーマがテーマだけに「ギャング」についても色々語っています。特に「どうしてギャングになってしまうのか」ですね。
様々な理由について語られています。お金のためだったり、見栄のためだったり、名誉?のためだったり、あるいは、いじめ等から自分を守るためだったり……。
欲望のためなら本人のせいと切り捨てることもできますが、果たして最後にあげたような自分の身を守るために、恐怖、あるいは畏怖を得ることを求めることはそんなに責めてよい問題でしょうか?
結論から先に言っておくと「しょうがないよね」で済ませたらいけない問題です。恐怖に負けた人間を責めることは簡単です。だって弱い人間なのは間違いないですから。その弱さを責めて良いのか?と考えてしまいます。少し極端な話になりますが、弱い者いじめをしていたら問題が解決するというのならば、いじめ自体が問題ではなくなるのか?という根本問題になりかねません。
確かに、弱いところから攻めるというのは軍略としてもありますが、最近のいじめ事情などを観ていると弱いものを倒して解決するという理屈になりがちな気がします。
もちろん意見は色々あると思いますが……。できれば、アンドレスさんみたいな元ギャングの人、あるいは恐怖のためにギャングになった人ではなく、国の文化や風習を解決する手段を考えていければ……と思います。
……簡単ではないので、こういう解決方法を選んでしまうのではないかと思いますので、もっと別の考えが必要なのかも知れませんが。
最後に
今回の本、というより全てのネガティブ本に言えることですが、私は決して「自分よりもっと不幸な人がいるんだからあなたは幸せ」とか「自分はこの人よりまだまともな人間だ」とか思ってほしいわけでは有りません。というか思ってほしくないです。
自分の苦しみや不幸、痛みを他人の苦しみや不幸で消すことは出来ません。鎮痛剤のように一時的に封じ込めるだけです。
たまにはいいのかもしれませんが、常にそういった形で苦しみを消そうとするといつか大きな犠牲を生み出すことになります。
何より、アンドレス自身が日本人に向けたメッセージは自身の「不幸」によるものではなく、自身の「選択」によるものでした。ありきたりな言葉かもしれませんが、逃亡の旅の中で周りの力を借りて一つずつ、時には軽はずみに、時には考え抜いて選択肢を選んできた「彼」だからこそ、言える言葉なのでしょう。
死ぬほど苦しくて、何かに命を奪われそうになった時、選択肢が他にあることを忘れてはいけない
本から伝わった最大のメッセージです。
余談
ここから余談になりますが……
日本人では「人を殺さない」というのは当たり前の感覚ですが世界で考えると決して楽ではないのかも知れません。もちろん犯罪には間違いないですが。
誰かを救おうとする人はいつだっています。しかし、国や組織の概念で捉えるのではなく、人として常にそういう人がいると考えてください。たとえ分けるのがどれだけ難しくても常に人で分けてほしいのです。
そもそも直接的に人を殺さないというのはわかりやすいですが、間接的に人を死においやることだってあります。日本のいじめやSNSで自殺に追い込むのはその例と言えるでしょう。
戦えとは言えません。状況によっては逃げろとも気軽には言えません。
殺さないでください。そして殺されないでください。
本のメッセージは「人生には選択肢がある」ということですが、私からのメッセージはこの言葉になります。
私がブログでメッセージを上げるように、ブログが何かしらの形でできない方でも一人一人のメッセージがこういった形で現れてほしいと思います。
もう一つのテーマ
「家族」です。実は記事には出しませんでしたが裏のテーマでもあります。どういった家族がいてどのような影響を受けたかをぜひ読んでみてください。
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