テーマは「友達」とネガティブテーマは「??」友達は多ければいいんですか?仲良くしなきゃいけないんですか?すべての人と友達にならなければいけないんですか?『友だち幻想』 菅野 仁

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その他

p155

こんな人におすすめ

  • 「友達作らないと……将来寂しくなる」
  • 「先生や親に友達作れと言われて育ってきたんですが……なんか辛いです」
  • 「誰だって友達同士になれるはず……どれだけ辛くても……自分が我慢すれば」

この本を読めば……

「友達ってこういうことなんだ!!」とわかります!

はじめに

友達

強力なポジティブワードの一つです。人によっては恋人や夫婦よりも人生における優先度が高く設定されていることもあります。仕事にしても、計画を立てるにしても一人の力は限界がありますし、打算的な関係ではなく、ただそばにいてくれるだけで「楽しい」あるいは「安心する」と感じることが出来るのならば、「人生において大きな財産」という言葉も全く過言ではないでしょう。

しかし、恐ろしいネガティブさを秘めている……というのは今までのすべてのポジティブな言葉を紹介する記事で言ってますが、もっとも身近になりやすく、もっとも恐ろしくなるというものでは、秘めたネガティブさは一番と言っても過言ではないかもしれません。

友達を作ることに固執する、友達はいないといけないと思い込む……そうでなくても単純に友達そのものが場合によっては人生の影を落とすことになるのです。

学生の人間関係はだいたいが「友達」が中心です。つまり若い人の人間関係の問題は「友達」がきっかけとなることは多いのではないでしょうか?

SNSトラブル、いじめ、鬱、ひきこもり……こういったニュースがあるとたまに見かけるのが「支えてくれる友達がいればよかったのかも」というコメントですが、色々な経験談や物語を見ていると、まさに「支えてくれる友達」(少なくとも周囲の目としては)が当事者であり、大きな原因となってしまった、ということが少なくないみたいです。

なぜ、こういった事が起きてしまうのでしょうか?

理由の一つとしては、世間が「友達という概念に対して理想を持ちすぎている」ということがあります。

「何だって話せるのが親友」「どんなことでも許せるのが親友」あるいは「子供ならどんな人だって友だちになれる」といった期待が大きな問題を生みます。

とはいえ、友達に期待するなというつもりはありません。1つに、最初から大きな期待を寄せすぎてしまうこと、そして2つ目に実際に友達になったとしても長い時間が適切な「友達」の距離感を追い越してしまうことが原因だと思われます。

今回の本は、有意識か無意識かは問わず、友達に理想を持ちすぎてしまっている人に対して「友達の在り方」を見直し、理解することで、距離感を調整し、精神的に楽になれて、トラブルを起こす可能性を低く出来る一石二鳥な本です。

注意ですが、

この本は「友達」を全否定するものでは有りません。世間の行き過ぎた友達に対する期待、すわなち、幻想を読み解き、適切な距離感を持って友達について考えるための本です。

言ってみれば調整のための本と言えるでしょう。

当ブログでは200ページ以内を短編と扱っておりこの本も短編にカテゴライズしましたが、加えてイラストがついているので気軽に読みやすいと思われます。イメージしつつそしてゆっくり読んでいきましょう。

距離感

大切なことは誰にでも仲良くすることでは有りません。仲良く出来ない人でもお互いに存在を認め、適切な距離をとることです。

ちなみに、本の中でも述べられていますが、大人が子供の問題について考える時、どこか子供だったら人間関係は何でも出来るという、これまた「幻想」を抱きがちな傾向にある気がします。

大人が出来ること、子供なら出来ること、両方できること、両方できないこと。

4つの視点でもう少し分けて考えたほうが良いとブログ著者は思いました。

誰とでも仲良く出来るは大人でも子供でもできないことというのは常に念頭に置いたほうが良いでしょう。「当たり前じゃん」と思われるかも知れませんが、子供なら簡単にできると思っている人が私の周りでも多くいるから言っています。確かに子供だから友達を作りやすいこともありますが、大人は大人の友人の作り方があるので一長一短です。

いや、私は友達多くないのでいうほどわからないですけど(説得力0発言)

とにかく大事なのは距離感ということですね。

時代の変化

問題が起きているのに、なかなか現状を変えられないという理由の一つは時代の変化に人の認識が追いついていないというものがあります。

まさに、友達の問題も該当します。

昔は確かに親密なつながりが必要でした。何かと話題に上がるムラ社会とですが、近くの人と仲良くしないと生きていけない、決まりは絶対守らなくてはいけない、という風潮があったみたいです。

しかし、かつて人が生きるために必要だったものは、逆に人を苦しめ、死に追い詰めることすらあるのです。

昔と違い、便利になったからこそ、人の距離感はより近くなりました。しかし、近すぎる関係こそが苦しみを産んでいるのです。

この本では、時代の変化によって何が必要になったか、何が不要になったかを読み解くことで、あらためて距離感を調整するための知識を得ることができます。

さらに言えば、技術の進歩で距離感を調整しやすくなったことを利用すると言えるかも知れません。

余談ですが、昔はよかったという人の理由の一つとして、「昔は人と人の繋がりが強かった」というものがありますが、厳密には違います。「近くの人との繋がりが薄くなった代わりに、遠くの人へもつながることが出来るようになった」といったほうが正しいでしょう。SNS、貿易、海外留学など例を上げるときりがありません。

繋がりを捨てるのではなく、新しい繋がり方を見つけ出し、考えるのです。

距離感を測るためのツール

筆箱のイラスト(四角)

もちろん理屈だけではなく、どうしたらよいのかもかなり手厚く説明されています。

ルールとフィーリングという概念や、同質性から並存性という言葉を紹介していますが、これらの言葉の意味はぜひ読んでみてください。(なかなか説明が難しいというのもありますが

とはいえ、難しい概念をそっくり理解する必要はありません。

まず、特定の言葉を使うことをやめること、最初から完成された関係を目指さないこと、そして、友達だけではなく、人が信じている幻想を捨てることなど、いきなりすぐはできないかもしれませんがちょっとずつ試すことはできます。

そして、子供が理想的な距離感を持つために親や教師、あるいは周りの大人は何が出来るのか、あるいは何をすべきでないのか、何を理想とするべきなのかも書いており、誰でも実践することが出来るでしょう。もちろん、自分たちで大人の友達観を見直す役にも立ちます。

曖昧だった人との距離感を道具を使ってキッチリ測ることで、近すぎることもなく、遠すぎることもなく、理想的な距離を知ることが出来るのです。

最後に

友だち幻想というタイトルですが、子供に、あるいは日本人全体におしつけられがちな幻想全般について考えさせられる本でした。

学校というのはどうも時代の変化にいまいちついていけてない気がしてなりません。そもそもこの本が出たのはかなり前(2008年初版出版)なのですが、今はちゃんと変化しているかといわれてしまうと、自殺率、いじめの事件などから考えても微妙なところです(統計的に減っているか増えているかも微妙ですしそもそも水面下で起きている事件も多いです)

そもそも私がいじめの当事者なので、学校に厳しい目を向けてしまう部分があるのは否めませんが、理由の一つになるであろう、世の中の友達幻想を解消できない限り、苦しむ人々は増え続けています。

根本の原因として学校に期待しすぎるのがそもそもいけないのかもしれません。(以前投稿した記事でもいいましたが)というと悪口に聞こえるかも知れませんが、学校に負担をかけすぎている、と言えばどうでしょうか?大切なのは一人ひとり何ができて、どう距離感を知っていくか……です。

少なくとも現代の人間の様々な技術や考え方ではすべての人と仲良くすることは幻想です。

もしかしたら将来的には人類の進化が人の理想の関係性に追いつき、「全人類皆兄弟」と呼ばれるような世界となるのかもしれませんが、少なくとも今は違うのです。さらに言えば、すべての人が仲良く出来る未来を仮に迎えるためにも、幻想にごまかされず、今の限界を知り、そして適切な距離感を知ることが大切なんだと思います。

「現在の限界を知る」というのはちょっとネガティブさはあるかもしれませんが、上記で述べたような時代の変化がまた起きて、人と人との距離感がまた変わった時に、大いに役立つことでしょう。

ネガティブテーマ

「偶像」ですね。理想を追うのはいいですが、理想が今ここに誰にでもあると錯覚しないようにしましょう。

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