さて、後半戦です。
ページ数そのままで上下巻編成、つまり純粋に1巻あたりの分量が2倍になります。(文庫本版はまた違うノアかもしれませんが)また、少年の大冒険的な側面が強かった前3巻に比べ、青年の悩みや葛藤といった大人と子供の中間線の描写も多く入ってきます。
さらにはプロローグで重要な出来事が起きていたりと伏線面においてもなかなか油断なりません。
読み手の年齢層に対してもある程度、話の切れ目、あるいは読者層の変化を意識させている、といっても過言ではないと思います。最もやはり伏線が気になる方も多いので味にはまってしまったらここでやめるという方は少ないでしょう。(私の知人でやめた人いますけど)
忍び寄る「例のあの人」の陰……巻をまたぐごとに、どこか空想めいていて、強さも恐ろしさもわからない「あの人」がはっきりとした形になり、そして少しずつ、しかし確実に登場人物たちの、そして読者の方々にも伝わるほど恐怖にもなっていきます。
すべての巻で失う覚悟を持ってください。
では、また各巻をちょっとずつお話していきますね。
ハリーポッターと炎のゴブレット
「例のあの人」の部下である「死喰い人」という概念、そして傍観者でいられたはずのハリーに襲いかかる戦いが、これから先に潜む運命を暗示しています。
悪気はなくても人を追い詰めるという善意の刃、親切そうに見せかけて実は……というような狡猾な悪も目立っていきます。誰を信じて誰を疑えば良いのかさえわからなくなってくる恐ろしさ……子供向けの物語からの卒業を印象づけます。
そして友人関係、信用関係にも危うさが目立ってきます。人は信じたいものしか信じないとは言いますが、真実を知っている側から見ればかなりじれったさを感じるでしょう。
「嫉妬」や「妬み」というのもサブテーマですね。こういった感情が悪ではないと主張する人もいますが、コントロールしなくていいというわけではありません。もっとも難しいから問題なのですがね。青春だけに収まらない、もっと大きな問題です。
そして、恋愛面に関してもハリーは大きな選択を迫っていくことになります。この巻だけではなく今後も続くより大きなサブテーマの一つと言ってもいいでしょう。
ちなみに、ハリーポッターを知らない人からよくある質問が「ハリーのパートナーって結局誰なの……?」というものなのですが……
「原作読め!!もしくは映画を見ろ!!」
と言いたくなりますね。伏線にも関わる大事な部分ですのでポロッと言って良いことでは有りません。4巻から6巻ぐらいまで細々としながらも日常的に悩むハリーの葛藤や決断などが青々しさと初々しさはちゃんと読んで確かめましょう。(ちょうど作者もこの巻の映画だけ見てないのは内緒です)
ハリーポッターと不死鳥の騎士団
タイトルのかっこよさで言うなら一番ですが、個人的に世知辛さという側面を見ても非常に強い巻です。
ハリーの立場が大変危ういものになり、命的にも社会的にも不安定、さらにはまだ子供とみなされている年齢のため、自分でどうにかすることさえ難しいというじれったさもあります。我々のような一般人(もしくは私のような劣等人)が感じる悩みにさらに過酷な運命が加算された息苦しさと痛みはファンタジー小説であることを忘れるほど辛辣です。
じれったさが爆発し、様々な事態に発展していくことになると同時にハリーの欠点にもスポットライトが当たっている回です。厄介なのが欠点は長所から生まれたもので、ハリーの力の源にもなっている部分がある、ということでしょうか。
長所と短所がなにかは言いませんが、ここまで読んできた方には薄々感づいているものがあるかもしれません。当巻で答え合わせをしてみましょう。
あと、友情と恋愛で悩むというある意味人生の究極のテーマにも触れています。正直個人的な印象としてはこういう場合、恋愛を取ると支持を得やすいような印象がありますが……(もう1度言いますが個人的な印象です)なかなか難しいですね。
また、「敵」ではないけど「悪」という人物も目立っていきます。あるいは「悪」ではないけど「敵」というべきでしょうかね。正義はそれぞれと言いますが、この巻で悪い意味で目立つ「彼女」にあまり正義という言葉は使いたくないものです。
ハリーポッターと謎のプリンス
もともとは半純血のプリンスという巻だったという噂があります。(和訳の際に変わったらしいです)
次巻作に向けてか、今までの伏線はあまり明らかにならず、むしろこの巻で出た伏線がこの巻内で、あるいは次の巻で回収されていきます。
必死に敵の情報、そして戦いの準備を進めていくハリーのもと、新聞で広まっていく各地の死喰い人の暗躍……直接的ではないものの、どこかゾッとする恐ろしさを感じさせます。
さらに、前作で散々な評価だったハリーの評価が上がっていき、高速の手のひら返しが多発する回でもあります。まあ人間ですから、信じたことが間違っていたり、人気者にあやかりたい気持ちはわかりますが……とりあえず現実でもし似たようなことが起きたら何らかの形で一回は謝っておくべきだと思います。
最も、この手のひら返しも日常の一つであり、そして日常はとある出来事がきっかけで終演を迎えることになるのです。手のひら返しは他人の問題に対して行えるものであり、もはやこのあとの世界に起こることは、すべての人にとって他人事ではなくなるのですから……。
しかし、決して油断しないでください。次の巻で最後とはいえ、ちょうどこの巻から始まる伏線も多く存在します。そしてその伏線こそが最後の戦いにつながる様々な希望へ繋がっていくのです。
ちなみに著者がネタバレされたのはこの回です。絶対に許さない
ハリーポッターと死の秘宝
前作までかろうじて続いていた日常の終焉です。何が起ころうと覚悟してください。
洗礼はいきなりやってきます。そしてどこまでも続きます。残念ながら、もはやこの物語は希望いっぱいの少年の活躍劇ではありません。大いなる闇と戦うための覚悟を決めた戦士たちの物語です。
何を失うか、誰を守れるか、そして何が出来るかをハリーと二人の親友、そして彼を取り巻く様々な人達が動いていきます。
前作で謎が多少は解けたもののあまりにも恐ろしく、強く、そして狡猾で残忍な闇の魔法使い……ハリーが想像しているよりもはるかに過酷で苦しく悲しみに満ち溢れた戦いが始まるのです。
そして、同時に様々なことを考えさせられます。
「命」とは何なのか。
「愛」とは何なのか。
「勇気」とは何なのか。
「友達」とは何なのか。
そして……「死」とは何なのか。
今までの基本舞台はホグワーツ+どこかと固定されていましたが、今回は色々な場所へ行きます。状況も二転三転していくので、読むスピードも早くなることでしょう。(前作をネタバレされた著者は発売日の内に学校を早退してその日のうちに完読しました。)
膨大な物語をすべて読み終えた満足感はもちろんのこと、恐ろしい伏線の数々や、ハリーの悩みや勇気、そして強さなど、教えられることは様々にあり、人生において大きな力になることでしょう。
最後に。
いかがでしたしょうか?
なかなか読書から離れている人にはハードルが高い読み物ですが、ただのファンタジーにおさまらないポジティブネガティブともに含み併せた壮大な物語です。ネガティブをポジティブにする力にもネガティブをそのまま活用する力にも溢れています。
一度読んでハマってしまうと気がついたら最終巻まで行ってしまうかもしれませんよ?
昔は全巻揃えると、本棚の一部を制圧され、かといって図書館で読むとなかなか読む気に離れませんでしたが、今は小さめの文庫本にもなっているのでもし興味が湧いた方はぜひ読んでみてください。
また、作者の裏情報やその後の物語などもあるので興味をもった方はそちらも調べて見ると、さらなる発見やざまあみろといいたくなるような気分爽快話もあります。
ぜひ、ハリーポッター
……とりあえず今回の記事で写真を巧く取る方法をもう少し学び直します。
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