オススメできる人
- 中国故事が好きな方
- ぱっとすぐ読めるためになる本が読みたい方
- ポジティブな人間論がどこか胡散臭いと思う方
電子書籍シリーズです。
孔子や孟子は皆様はご存知でしょうか?
「勝負事にどうやったら勝てるか?」「人生を上手に渡るにはどうしたらいいか?」「厄介な出来事にうまく対処するにはどうしたらいいか?」といったことを教えてくれる戦いに関する「戦略」の教え、あるいは人生に関する「指針」の教えを数多く残した中国の有名な思想家達ということで有名ですね。
実際読んで見るとなかなかおもしろく、現代でも十分に通じる話が数多く存在します。
学校でもオススメの本棚に上がりやすかったり、あるいは中国以外のスポーツ選手や、起業家、実業家の方々は絶対と言っていいほど読み込み、教えを実践している……とまあなかなか実際の行動に現れているかどうかは知るのは難しいですが、「参考にしている」と語る人は多いです。
しかし、読んでみると良いことは言っているけど、どこか納得できないとか、なんか理想論すぎない?とかもっと率直に言うならば、人に対してどこか優しすぎない?と感じた方もいらっしゃるのはないでしょうか?(まあ別に孔子は誰にでも優しかったわけでもなく、一説によると「やろうとしないやつは何を言っても無駄」と言った形の冷淡さもあったみたいですが)
そんなポジティブ思想に納得できない方にオススメなのが韓非子であり、彼の教えを超コンパクトかつ、現代風に、あるいはストーリー風に解釈したのが紹介の本です。
彼は優しいことや、理想論は語りません。
「あ〜これだから人ってやつは……」と溜息付きたくなったり
「結局人間なんてそんなもんだよ」と諦めたくなったり
思わず凹んでしまうようなかなりのネガティブ性を秘めつつ、人が隠している、もしくは隠したい本音や本質を説いて、人はどのように動くか、そして自分はどういったように動くべきかを紹介します。
教えの基本としては人は「性悪説」(生まれついての悪であり、弱い存在であることの考え方の一つ。逆の考えが性善説です)であり、だからこそ、法や規律で厳しく縛り、安定させなければならない、というのが基本です。
あまり、情がなく、容赦なく、まさに非情という数々の教えですが、まさにあなたが子供の頃、そして、今知りたい「人との交流の仕方」そして「生き方」について書いてあるかも知れません。
ジャンルとしてはことわざ辞典に近い部分もあるのでぱっと気になった部分があったらぱっと読むやり方もオススメです。
非常にコンパクトでパワフルな教え
全ての教えはほぼ1ページ以内に収まりますが、その淡白さがわかりやすさと非情さを増しています。感情や優しさ、信頼、勇気などの理想ではなく、人の裏、習性、醜さ、罠、そして対する交流の仕方や法、つまり決まりごとの実践の仕方といったものを一つ一つ拾い上げるように紹介してきます。
その数なんと200!一つ一つは少なくとも重ね合わせて考えたり、共通点を探ってみてより記憶を定着させるには十分な量です。
正直、ちょっと説明不足かな?と思う部分はなくはありませんが、その分、現在においても通じる人の醜さを知り、利用し、避け、裏をかくといったいわゆる「ずる賢さ」と感情を度外視した「冷酷さ」による力は身につけることが出来ます。
そして、ネガティブなものでないほうがいいように見えても実は大切なものだったりないと思わぬ禍につながってしまうといった教えもあり、世間が信じてしまいがちなポジティブさや道徳の教えと真っ向から対立していると言えるでしょう。
とはいえ、大部分では非情ではあるものの、人のもつ「情」を全く無下にしているわけではありません。むしろ人の「情」を理解し、大切にするため、「情」で制御できない部分を非情な「法」や「規律」などによって制御しているとも言える部分もあります。
残酷さやネガティブ要素はあるものの、人全体がより良くなることを目指している教えなのです。
自己責任で変える部分に取り組む
他人の動きを期待したような教えはありません。むしろ他人を期待しないように、うまく動かすような教えが多くありました。
本音を知ることで動く、というのは上記でも説明しましたが、つまり相手の本音を暴き出し、自分の本音とぶつかり合わせ、正々堂々、正面からぶつかりあって、最後に友情が芽生える和解する……。
といった青春喧嘩を望んでいるわけではもちろんなく、イメージとしては水面下で相手の動きを推察し、一方で自分の考えをさとられずに動く。言ってみれば水面下同士でぶつかりあっているようですれ違っているようで、ひとまずは、正面衝突とは離れています。自分に期待させず、相手に期待もさせない、まさに非情です。
しかし、人と人との「距離感」は人間関係において大切な要素の一つです。腹を割ってとことん話し合いたいという人もいますが、誰にも「触れられたくない、でも本音ではこうしたい」という部分もあります。
見抜いて直接どうこうしようとするよりは、静観しつつ、自分のために動いたほうが、結局は相手のためになる、あるいは全体のためになるということも多くあります。
無常感
戦略ともいいましたが、非情というか、諦めという部分もあります。韓非子は性悪説をとなえ、だからこそ法や規則で人の悪や弱さを制御することが大切という主張なのですが、それでもどうにもならない部分も多くあることも唱えています。
国にしてもこうなってしまってはもはや滅ぶだけ、人によってもこうなってしまってはもはや衰えるだけといったように、どこかもはや手遅れ状態のことも無常に語ったりします。
人によってもやはり容赦なく、「無駄」だの「関係ない」だのといった教えもあり、「人に期待しない」というのも大きなテーマでもあります。
じゃあ「何もかも全部諦めよー」という形かというともちろんそんなことはありません。少なくとも「自分」は絶対に諦めません。見捨てることはあっても、「自分」がやらない理由を作ったり、あるいは「自分」を犠牲にするような教えはなく、むしろ、正しく厳しく法を守った先に答えを用意しています。
自己本位という言葉の残酷さはまさに非情ですが、自分を大切にするということをもう1度見直すのに適しているとも言えるでしょう。
総評
一つ一つが1ページ、あるいは1ページを少しだけ過ぎる程度なので非常に読みやすい本であり、ちょっと説明不足かな?と思えるほどコンパクトに説明しています。
読んで興味が出た方は他の韓非子の本を読んだり、孫氏や孟子の話を読みながら、比較したり、共通点を探したりすると、より自分にとっての重要な教えが見つけやすくなるでしょう。
まあ、あまり人、特に学生の方は教師などには教えないほうが良いかも知れません。自分でこっそり知っておいてこっそり実践するという面も含めた「非情」の力を鍛えてみてください。
イングランド、ドイツのことわざで「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉がありますが、案外、「天国への道は非情さで塗装されている」かもしれませんよ?(悪意でないところがミソです)
もちろん「すべての非情を肯定せよ」と言っているわけではありません。むしろ、是非この本を読んで、「非情」の良し悪しを見抜けるようになってください。
あ、このブログに関してはあまり非情なコメントを出さないよう(強制終了)
もう一つのテーマ
「実直」です。
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