p207(あとがきを入れるとp213)
オススメできる方
- 病気になったらどうしようと考える方
- 人生やりたいことがある方
今回のテーマは「病気」です。
「病気」がテーマというのは当ブログでは初めてであり、こんな(開き直って)明るそうな人が表紙の本で良いのかと若干悩みましたが、何かと発見もありましたので紹介します。
病気というとやはりネガティブなイメージは外せません。体の痛みや苦しみ、行動の制限、社会的な立場、周囲からの目線、とあげるときりがないです。
一方で、何かと話題、いわゆる、酒のつまみになりやすいという面もあります。「いやあ、水虫が辛くって」とか「昔、○○針縫うほどの大怪我をしましてな」といった形でポジティブな雰囲気の中、語られることもあるでしょう。
今回はなかなかポジティブに出来ないような笑えない経験を無理にお酒のつまみレベルに笑えるような話にした人物の実際にあったお話です。ちなみに作者様も病気を自慢するのは若干不謹慎だと自分でおっしゃっているみたいですが、「ガンになったからもういいだろう」という形で書き始めたみたいです。
今更ながらエッセイというジャンルを初めて知ったと言うか、私が書いているのもおそらくはエッセイですよね。
病気なのに元気すぎる人
病気自慢というタイトルは伊達ではなく小さなものだと花粉症や通風、大きいものだと、白内障やガンなど多く取り上げている……というより経験されているみたいです。
そういった病気にあって、辛い日々を語りながらもさりげない幸せを感じながら過ごした……と思いきや、この方は病気の苦しみや行動の制限については1ページぐらい、下手をすれば数行で終え、楽しかった雰囲気や思い出話、途中で抜け出して思いっきり病気に差し障りが出そうなことをした話などをし始め、思わず
となるほど、悲壮感はほとんどありません。中には数ページにわたって病気にかかったときの話もあるにはあるのですが、深刻な事態なのにも関わらずほとんど悲壮感を感じない書き方をしています。
最も病気や死について軽視しているというわけでもなく、もしこうなったらという不安やもし倒れてそのまま動かなくなったらといった考えも同時に書いています。もちろん、実際に病気にかかった時、どういう状態になったのか、どのような苦しみが書かれていたか等、短いとは言いましたが、想像するとなかなかすさまじい光景が浮かびました。
自伝的な部分も多くあり、病気のことだけではなく、ダイエットや健康法、サプリメントについても書いており、どちらかというとこちらは「健康」的な意味合いが強い部分もあります。
とりあえず読み終わっての感想は「とにかく元気な方」でした。
病気と医者との距離感
玉村さんは何度も病気と通院、入院を繰り返した結果、病気に対して独特の価値観を持っています。特に多くの人が医者を完全に信じてしまう中で、「医者と距離感を保ちつつ、ある程度自分でもできることをする」という理念がありました。
もっとも、ドラマなどで出てきたら「真似しないでください」というテロップが出てきそうなこともちらほらやっており、そのせいで症状が悪化したこともありますが、中にはある程度効果があったもの、あるいは心理の作用でいい影響が出たものもあり、馬鹿にできないものです。
まあ、やっぱり巻末の部分に「医学的根拠は著者の見解によるもの」「すべての人に同じ効果があるとは限らない」と書かれており、早い話が「もし試すなら自己責任」ということみたいです。
先に行っておきますが、「医者の言っていることの逆をやれ」「自分のやりたいように生きろ」と言いたいわけではありません。
そうではなく、「自分が試したいこと」「医者の言っていること」「自分が感じる病気の状態」「他人から見た病気の状態」を総合的に考えてバランスを取っていくことが大事ということですね。
もっとわかりやすく言うなら天下のお医者様といえど、「黙って指示に従う」「全肯定して盲信する」という行為は危険とまでは言わないまでも後悔することになるかも、ということです。もちろん可能な限り相談はしたほうが良いと思いますが。
適切な距離感は人に違いますが、病気との付き合いに関してもある程度、「自分」を残していても良いのではないか、玉村さんを見て思いました。
まあ、ここまではやりすぎだと思いますが。
病気が教えてくれたこと
病気というのは色々教えてくれるものです。私も「鬱」になってから、色々教わったことがありました。人間関係、自分の体調、努力のほんとうの意味、そして何よりブログのテーマであるネガティブの活用法と視点の変え方などです。このあたりはまた別の機会に話します。
当本でも、医者に教わったことや、通院することになった時に一日をどう過ごすか、最終的には寝たきりになった時にどう過ごすか、暇な時どうするか、何かができなくなった時に代わりに何ができるかといったことが書かれていました。
「何かができなくなる」というのはネガティブであり、あまり考えたくないことですが、そうした事態を想定して対策をとると、逆に安心できることもあります。隕石が堕ちてくるとか対策も出来ない場合は諦めるしかないですが、それはそれで堕ちてくるまでの数十秒間何をするかと言ったジョークにつなげられればかなり強く慣れます。(私はまだ無理だと思いますが)
新しい趣味を見つけたり、色々なことを試す機会ができたりとこの本の中でも紹介されていますが、病気になったらそういったことを初めて見ると考えたら少しだけ恐怖も薄れるかも知れません。
後は単純に、ちょっと変わった病気になると、周りの方が同じような病気になった時役立つという部分もありますね。作中でも玉村さんはちょっと変わったアレルギーや病気にかかっていました。
最近は少し改善されてきましたが、未だにどこか軽視されやすいアレルギー、それもちょっと信じられないようなアレルギーについて理解しておけば、身近な誰かが同じ状態になった時に理解しやすくなると思います。
総評
ひとまず言えることは病気の本にも関わらずかなりパワーに溢れた本でした。なかなか大変な状況にも関わらず、他人事のような、しかし主観的な考えはちゃんとあり、まさに病気だらけの生き様を元気よく描いた本です。
ただ、一つ、お願いがあります。
この本を読んで病気の人、鬱の人、苦しんでいる人はもっと頑張れるといった考え方はあまりしてほしくはありません。
というのは経歴を見たらわかりますが、この人は割とすさまじい功績と才能を持っていらっしゃるようで、病気に対してもどこかポジティブだったり、活用したり、あるいは掟破りなことができるのは個人としての素質があることは否定できません。
病気の距離感や、病気から学ぶ方法に関しては大いに参考にしていただける部分もありますが、「こういう人もいるんだな」ということを頭の片隅に入れておくだけでも十分だと思います。
イメージとしては病気などで苦しんだ時に
ちょっとだけ作者の方から力をわけてもらう
といった具合で本を役立ててほしいと思います。
もう一つのテーマ
「楽しみ」ですね。
要点へのヒント
自伝のようなエッセイなので要点と言えるようなものはありませんでした。
最後に履歴書が書かれているのでそちらを見ながら並行して読んでも良いかも知れません。(ちなみに履歴書の最後には最初のあらすじを見ているとこの本の前提段階を覆す驚愕の事実が書かれていました)
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